2009年4月17日(金)「しんぶん赤旗」
企業・団体献金
民主、「全面禁止」打ち出したが
民主党は、政治改革推進本部(本部長・岡田克也副代表)の役員会で確認した企業・団体献金の「将来的な全面禁止」について、党所属議員へのアンケートや議員総会の議論を通じて、同党としての最終的な立場を決定するとしています。
疑惑の逆風
民主党が「全面禁止」の方向を打ち出した背景には、小沢一郎代表の西松建設違法献金疑惑の逆風があります。世論調査では小沢氏の代表続投を了承した同党の対応に66%が「納得できない」と回答(「毎日」十一日付)。総選挙を前に「『政治とカネ』の問題で自民党にはできず、民主党ならではという姿を示すのが肝要だ」(鳩山由紀夫幹事長、十日の記者会見)として企業・団体献金問題を浮上させました。
「将来的な」方向であれ、同党が企業・団体献金の「全面禁止」に言及したことは、小沢氏の西松献金疑惑に違法な企業・団体献金が存在し、その根本解決には「全面禁止」しか道がないことを認めたものです。
ところが、小沢氏自身は今も、西松建設のダミー(隠れみの)政治団体から巨額の企業献金を受けてきたことへの総括や国民への説明はありません。民主党は第三者による調査委員会を設置しましたが、マスメディアや検察の“あり方”などを検証するだけで、小沢氏の疑惑を調査するものではありません。
小沢氏をはじめ民主党としてこれまで受けてきた企業・団体献金のどこが悪かったのか、企業・団体献金を受けることでどんな弊害があったのかの議論を欠いたまま、「全面禁止の方向」が出ているのです。
経過措置で
こうした事情があるため、全党討議のたたき台として政治改革推進本部の役員会が示した案には、企業・団体献金を続けるあれこれの「経過措置」が設けられています。
「全面禁止」までの間は、▽献金する企業・団体は総務省へ登録する▽国や地方自治体と一定額以上の公共事業や物品納入などを契約している企業・団体の献金やパーティー券購入は禁止する―としていますが、「逆にいうと、それ以外の企業からの献金は認めるという案」(岡田氏、十日付の自身のブログ)です。民主党は二〇〇五年まで選挙公約で、契約額を問わず公共事業受注企業の献金全面禁止を掲げていましたが、その立場からも後退する案です。
鳩山氏は「全面禁止は五年後」との見方を示しています。企業・団体献金の扱いで「経過措置」が持ち出される時、それは温存を図る先送りとなります。一九九四年に政党助成金制度を導入する際も、政治家個人への企業献金は五年後に「禁止」、政党への企業献金も「見直しを行う」とされました。ところが、その後、小沢氏が率いる自由党と自民・公明両党が一緒に、政治家個人への企業献金は禁止するが、政党や政党支部への企業・団体献金を合法化する骨抜きを行いました。
民主党は、企業・団体献金の「全面禁止の方向」が解決の道とするなら、あれこれ「経過措置」を設けず、政党として企業・団体献金を受け取らない態度を示すべきではないでしょうか。(林信誠)