2009年4月17日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「かんぽの宿」
疑惑の解明はまだ“道半ば”
オリックス不動産への異常な安値での一括売却契約が問題になった日本郵政会社の「かんぽの宿」について、鳩山邦夫総務相が調査結果と業務改善命令を発表し、一方、参院決算委員会の調査要請をうけて、会計検査院が日本郵政や総務省への検査を決めました。
ことは国民の保険料でつくられた施設が不当に安く払い下げられようとしたという疑惑です。解明は“道半ば”です。疑惑を徹底解明するとともに、背景となった郵政民営化そのものにメスを入れることが不可欠です。
安値で不透明な売却
「かんぽの宿」の売却疑惑は、日本郵政が各地の「かんぽの宿」と宿泊施設「ラフレさいたま」、首都圏の社宅などあわせて七十九施設を百九億円でオリックス不動産に売却しようとしたものです。これらの施設の建設費用は約二千四百億円、「ラフレさいたま」だけでも約二百八十億円が投じられたといいます。異常な安値に疑惑がもたれたのは当然です。
売却先のオリックス・グループの宮内義彦会長は、歴代自民党政府が進めた「規制改革」路線の文字通り“旗振り役”で、郵政の民営化・分割についてもたびたび発言してきました。売却先がオリックス不動産にきまった経過も、公開の入札とはとても呼べない不透明なものです。まさに「出来レース」ではないかと疑われました。
今回、オリックス不動産への売却計画をストップさせた鳩山総務相による調査でも、譲渡価格は不当に低く、入札の手続きにも問題があったなど、十六項目にのぼる問題点が明らかになりました。総務相は、日本郵政には「かんぽの宿」が国民共有の財産だという認識がなかったと批判し、六月末までの改善を命令しました。日本郵政の責任は重大であり、総務省と日本郵政には疑惑解明を“道半ば”に終わらせず、今後も国民の追及に答える責任があります。
同時に見過ごせないのは、今回の疑惑はあくまでも“氷山の一角”だということです。「かんぽの宿」など旧郵政公社が保有した施設の売却は、郵政公社が二〇〇七年に民営化され、郵便・郵便貯金・簡易保険(かんぽ)の事業ごとに分割される前から始まっていました。日本郵政の社長に就任した西川善文氏の出身企業、三井住友銀行の関与や入手した企業による転売疑惑も指摘されています。
しかも、もともと簡易保険加入者のための施設だった「かんぽの宿」が、郵政の民営化・分割の際に日本郵政の施設とされ、二〇一二年九月までの売却を義務付けられた経過も不透明です。「かんぽの宿」の疑惑を正すためには、全面的な洗い直しが不可欠です。
郵政民営化の見直しを
国民の反対を押し切り強行された郵政の民営化・分割をめぐっては、地方の郵便局の切り捨てなど、国民にとって百害あって一利もない実態がすでに明らかになっています。加えて今回の「かんぽの宿」疑惑は、郵政民営化が大企業にもうけ口を提供するだけだったことを浮き彫りにするものです。
簡易保険(現かんぽ生命)をめぐっては、保険金の未払いが百四十万件にものぼり、その調査費用が契約者負担となることも明らかになりました。郵政の民営化・分割そのものを、根本から見直すことがいよいよ避けられません。
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