2009年4月11日(土)「しんぶん赤旗」
主張
政府「経済危機対策」
国民にツケ回す愚かな支出
麻生内閣と自公が「経済危機対策」を取りまとめました。補正予算の財政支出は総額十五兆円を超える過去最大の規模です。
米国やIMF(国際通貨基金)は、GDP(国内総生産)比で2%(十兆円)の対策を求めています。さらに経済財政諮問会議は「失業率をこれまでの最高水準(5・5%)にとどめるため」として、GDP比3%(十五兆円)の対策が必要だと言っています。
「はじめに総額ありき」で、無駄遣い型予算の典型です。
「賢明な支出」と言うが
「経済危機対策」は「賢明な支出」をうたっています。ところが、その中身は高速道路・巨大港湾などに二・六兆円を費やす大型工事や、五十兆円の公的資金で株式を買い取る「株価対策」など浪費とばらまきが目立ちます。「総額ありき」で大企業・大資産家にばらまいても庶民と中小企業にはお金が回らず、内需回復につながらなかった一九九〇年代の「愚かな支出」の繰り返しです。
しかも「経済危機対策」は、後期高齢者医療制度の存続と障害者自立支援法の応益負担に固執するなど、社会保障の抑制路線には指一本触れようとしていません。
経済対策の責任者である与謝野馨財務相が自ら語っています。小泉内閣の「骨太方針2006」は「基本的には変わらない」―。
「骨太方針2006」は、社会保障を抑制し消費税を増税する一方、大企業減税と軍事費の聖域扱いを続ける財政運営のレールを敷きました。内需を弱め、外需・輸出依存に拍車をかける路線は、日本経済が陥っている深刻な景気悪化の大もとにほかなりません。
政府・与党も「輸出に依存した成長軌道への復帰を期待するのは最早、現実的ではない」(「経済危機対策」)と認めています。にもかかわらず、「危機」を口実に従来型のばらまきを並べました。
その背景には「外需は一時的な落ち込みで、必ず他の国もプラス成長になって外需が再び戻ってくる」(与謝野財務相)という与党の甘い見通しがあります。
これでは日本経済の体質を内需主導型に改めることなど到底できません。暮らしにも景気にも役立たず、経済を回復軌道に乗せられない財政出動は赤字を増やすだけです。
自民党は「税制改正を行うことによって(財政の)後始末をする」(伊吹文明元財務相)と公言しています。わざわざ「経済危機対策」にまで、消費税増税を定めた「中期プログラム」を、過去最大の財政支出に対応して「改訂する」と盛り込みました。麻生内閣と自民党、公明党は、浪費とばらまきのツケを消費税の増税で国民に押し付けようとしています。
「愚かな支出」と消費税増税による「後始末」―。九〇年代の「失われた十年」の過ちを再び繰り返す最悪のプログラムです。
暮らし守る姿勢こそ
経済を立て直すには大企業の雇用破壊、大銀行の貸し渋りを止め、社会保障の削減路線を改めるなど政策の抜本転換が必要です。大事なのは、政府が国民の暮らしを守る姿勢を鮮明にすることです。
大企業・大資産家に本来の負担を求めることは同時に必要な財源を生みだす改革につながります。家計を犠牲にして大企業・大資産家を応援する「構造改革」路線に、明確に終止符を打つべきです。
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