2009年4月6日(月)「しんぶん赤旗」

米、移民30万人勾留

司法手続きなし、待遇劣悪

人権団体告発


 米国が「不法入国・滞在」だとして国内の勾留施設に収容中の移民が二〇〇八年には常時三万人と、十二年前の三倍になり、劣悪な状況に置かれていると問題になってます。

 人権団体「アムネスティ・インターナショナル米国」が三月下旬に発表した報告書「司法手続きなき投獄―米国の移民勾留」によると、毎年合計三十万人以上が米出入国管理当局によって勾留施設に送られています。その84%が訴訟のための法的援助を得られず、何万人もの人が勾留の正当性を問う審問さえ受けていません。

 勾留される「不法移民」には、出稼ぎで入国した低賃金労働者のほか、亡命希望者、拷問・虐待から逃れてきた人、人身売買の犠牲者などもいます。

 強制送還か否かの結論が出るまで数カ月、あるいは数年間かかり、その間は勾留されたままです。保釈金は高額で、支払い能力を超えています。勾留者の67%が州・郡刑務所に収容され、刑事犯罪人と同室にされる例も少なくありません。

 勾留者に対する精神的ケアを含む医療は極めて不十分で、手錠、腰鎖、足かせで身体の自由が奪われることもしばしばです。過去五年間に七十四人が勾留中に死亡しています。

 国際人権基準では、個々のケースごとに根拠を示し、司法の検討に委ねた上で、特別の事情が認められる場合にのみ勾留を認めています。

 アムネスティ・インターナショナル米国のコックス事務局長は「米国のこの大規模な人権侵害は、糾弾されてしかるべきだ」と指摘。レイノルズ難民・移民担当部長は「〇一年の同時テロ以降急増し続け、〇九年は四十万人が勾留されるとみられる」と述べています。

 報告書は米政府に対し、国際基準の尊重と独立した監督機関の設置を要求、米議会に法改正を求めています。(居波保夫)


 米国の「不法移民」 二〇〇七年一月時点で約千二百万人に上り、圧倒的多数は経済的理由で密入国あるいはビザ期限切れ後も滞在する低賃金労働者やその家族です。中南米系が多くを占め、農作業、建設、食肉処理、清掃など社会生活に不可欠な厳しい肉体労働に従事、税金も納めています。議会では一定の条件付きで合法化が検討されましたが、取り締まり・処罰強化一辺倒の保守派の抵抗で実現していません。


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