2009年4月3日(金)「しんぶん赤旗」
主張
グアム基地協定
徹底審議で廃案に追い込もう
在沖縄米海兵隊の移転を名目にして、グアム基地建設費の負担を日本に義務付ける日米協定の審議が衆院外務委員会で始まります。
日本政府も認めているように、自国に駐留する外国の軍隊が国外に移転するからといって移転先での基地建設費を負担する国は世界にありません。グアムでの米軍基地建設費を負担するのは、主権を軽んじる日本でしかみられない世界の異常です。米軍基地に苦しむ沖縄県民をだしにして、このような前代未聞の屈辱的協定を結ぶなど認めるわけにはいきません。
痛みが大きくなるだけ
政府は、日米協定が沖縄県民の「基地の痛みを軽減する」ものと説明していますが、事実に反します。二月に来日して日米協定に署名したクリントン米国務長官は、日米外相会談後の共同会見で、協定は「太平洋におけるわれわれの軍事態勢を最新のものにするもの」だとのべました。
沖縄米海兵隊の司令部の移転を含むグアム基地の建設・強化が、米軍事戦略を強めるためであるのは明白です。基地の痛みをなくせという沖縄県民の切実な願いを逆手にとって、日本国民の血税を投入し、グアム基地の建設・強化に手を貸すのは、絶対に許せることではありません。
とりわけ重大なのは、協定が新たな痛みを沖縄県民に押し付けていることです。前文で、グアム移転が実現するのは、沖縄・名護市での新基地の「完成に向けての具体的な進展」に「かかっている」とのべています。新基地建設を阻んでいる七割もの沖縄県民の声を圧殺して、移転と「セット」で計画を加速する強権的な協定に反対するのは当然です。
二〇〇六年五月の日米合意にない戦闘施設の負担計画もあらわになりました。日本共産党の笠井亮衆議院議員の要求で防衛省が提出した日本側作成の「基本構想」には、移転する海兵隊司令部とは関係のない、グアムの既存の空軍基地、海軍基地の強化までうたっています。例えば、海軍アプラ基地を四万トン級の強襲揚陸艦などが停泊できるようにすることです。空母の寄港も千人もの兵員を運ぶ高速輸送艦も使える最新鋭の基地にするというのです。もともとの日米合意にさえ逸脱した協定を成立させるわけにはいきません。
積算根拠を示さず、財政支出分二十八億ドル(約二千七百億円)と出資・融資分三十二・九億ドル(約三千二百億円)合わせて合計約六十一億ドルを負担するやり方も問題です。司令部庁舎や学校などで二十八億ドルというのは、悪名高い在日米軍への「思いやり予算」に照らしても高すぎます。日本では五千万円ほどの米軍家族住宅がグアムではなぜ七千万円にもなるのか、負担内容は疑問だらけです。
米軍再編を許さない
グアム基地と在日米軍基地の再編・強化は、世界のどこにでもすばやく“殴りこみ”部隊を送り込み、軍事介入できるようにするためにブッシュ前政権が進めた戦争態勢づくりです。イラク戦争の失敗でアメリカの軍事覇権主義が破たんしたことからも、中止が当然です。日米協定はどこからみても異常です。
審議を尽くし、廃案に追い込むことが重要です。米軍再編をやめ、基地のない平和な日本と対等・平等の日米関係をめざすべきです。
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