2009年3月30日(月)「しんぶん赤旗」

主張

岩国爆音訴訟

やむにやまれない住民の決起


 山口県岩国市の米海兵隊岩国基地周辺在住の市民四百七十六人が、国を相手取って爆音訴訟をおこしました。

 この訴訟は、岩国市民が初めて行う爆音訴訟であるとともに、神奈川県厚木基地からの空母艦載機部隊移転の差し止めを求める初の訴訟です。全国の注目を集めています。各地の爆音訴訟後も国は米軍機の飛行を容認し続け、裁判所も国の姿勢を批判するものの飛行差し止めの判断は避けているため、爆音被害は続いています。こうした壁を乗り越え、人間らしい生活を実現することが、訴訟にこめられた市民の願いです。

耐え難い“音の拷問”

 岩国市民は、岩国基地の滑走路の沖合移転が実現すれば爆音が軽減されると期待してきました。しかし日米両政府は、厚木基地から五十九機、普天間基地(沖縄県)から十二機の米軍機を岩国基地に移す米軍再編計画を決定し、市民の願いをうちくだいたのです。岩国基地が合計約百三十機もの米軍機が離着陸する極東最大の基地になれば、爆音被害は軽減するどころか、激増します。やむにやまれず訴訟に踏み切った住民の思いに裁判所は応える義務があります。

 訴えたのは騒音のひどさを表すW値(うるささ指数)が七五以上の地域で生活する住民です。住居地域での国の環境基準は七〇です。七五以上の騒音について、「受忍限度を越えており損害賠償を要する違法状態」とこれまでどの裁判の判決でも断じています。

 爆音は人間らしい生活を破壊し、耐え難い苦痛を与えます。家族だんらんは妨げられ、会話も自由になりません。とりわけ夜間・早朝の爆音は睡眠を中断させ、血圧・心拍数の急激な上昇や呼吸の乱れさえ引き起こします。「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法にも反する事態です。放置していいはずがありません。

 空母艦載機部隊の岩国基地移転は、岩国市民にとって、爆音被害も墜落の危険も激増します。米兵の増加で凶悪犯罪も増えます。厚木で許されないものをたらい回しにして岩国にもってくることがそもそも間違っています。

 米軍機が百三十機にもなれば低空飛行訓練も増えます。低空飛行は今でも中国地方など広範な地域で、多くの住民を恐怖に陥れています。低空飛行訓練の強化は国民の願いを逆なでするものです。

再編反対運動と一体で

 爆音被害をカネですますのではなく、米軍事要請の絶対化と国民に犠牲を押し付ける態度を根本からただすことが重要です。

 岩国基地での米軍再編は、厚木基地や普天間基地から四千人以上もの兵員・家族が移転するため、新たな家族住宅が必要です。防衛省は対象地として基地に近接する愛宕山地域開発跡地を狙っています。しかし、「愛宕山を守る市民連絡協議会」がとりくんだ「愛宕山に米軍住宅はいらない!市民請願署名」は目標を大幅に上回り十万人を超えました。爆音も危険もない生活を求める願いの強さを示すものです。

 憲法が保障している平和的生存権に裏付けられた要求と運動を政府が無視することは許されません。市民を苦しめる岩国基地の再編・強化をやめさせ、爆音被害の軽減のための日米交渉にふみださせることがいよいよ重要です。



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