2009年3月25日(水)「しんぶん赤旗」
主張
「西松」献金事件
起訴の事実は、限りなく重い
準大手ゼネコン「西松建設」からの政治団体を偽装した違法な献金をめぐり、政治資金規正法違反(虚偽記載など)で東京地検特捜部に逮捕された、小沢一郎民主党代表の政策第一秘書(小沢氏の資金管理団体の会計責任者)が、勾留期限の二十四日起訴されました。小沢代表は自らの潔白を改めて主張し、当面、代表などの座にとどまる意向を表明しました。
規正法違反は重大犯罪
もちろん、検察当局も起訴にあたってきびしく批判したように、政治資金規正法に違反しているとして政治家の秘書が逮捕・起訴された事実は、軽々しくすませてよいことではありません。
政治資金規正法は政治家個人への企業献金を禁止するとともに、名義を偽った献金も、その受け取りも禁止しています。会計責任者の秘書が起訴されたのは、政治団体を偽装した献金が実際には「西松」からであることを知りながら受け取り、政治資金収支報告で虚偽を届け出たというものです。
政治家や政党が政治資金の毎年の届け出と公開を義務付けられ、出し入れを規正されているのは、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」(政治資金規正法第一条)です。虚偽の届け出をしていたとなれば制度の根幹が崩され、それだけでもその政治家は政治を担う資格が問われることになります。会計責任者が起訴され、代表者の小沢氏が無関係ではすまされません。
しかもことは企業献金にかかわる違反です。もともと営利が目的の企業が献金するのは見返りを求めるためで、政治買収や収賄などの重大犯罪とのかかわりでも、企業献金はきびしく規制されて当然です。政治家個人への献金禁止を免れるため、政治団体を偽装したり、政党を迂回(うかい)して受け取るなどというのは、企業献金規制の目的から逸脱しています。
小沢氏は違法献金の疑惑が明らかになった後、資金管理団体でなく政党支部で受け取れば何の問題もなかったかのように発言しました。まさに、数々の金権腐敗事件への反省から政治家個人への企業献金が禁止されるにいたった経過をわきまえない、不当な発言です。
しかもその一方で小沢氏は、公共事業受注企業だけでなく、すべての企業・団体献金は禁止すべきだと言い出しています。発言が本心なら、秘書とはいえ企業献金にかかわる違反が問われたことに、よりきびしく向き合うべきです。
疑惑は解明されていない
重大なのは秘書の起訴だけで違法献金にかかわる疑惑がすべて解明されたわけではないことです。
小沢氏らに巨額の献金を繰り返した「西松」は、東北地方などで公共事業を受注しています。小沢氏への「西松」の献金がいったい何のために行われたのか、献金への見返りはなかったのか、小沢氏と同じように献金やパーティー券購入の便宜を受けていた二階俊博経済産業相や尾身幸次元財務相らの場合はどうかなど、解明すべき疑惑は山積しています。
政治家は政治資金の公開とともに、疑惑をもたれた場合は、「真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう」(衆院政治倫理綱領)求められます。自ら疑惑を解明し国民に説明するかどうか、小沢氏ら政治家と自民、民主両党の責任は重大です。