2009年3月26日(木)「しんぶん赤旗」

技術系人材派遣会社シーテック

入社前、内定辞退を強要

転籍・待機・解雇を通知 広がる不安


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(写真)シーテックの雇用通知書と転籍同意書

 技術系人材派遣会社シーテック(嶋岡学社長、グッドウィル・グループ=現ラディアホールディングスのグループ会社)は今春、正規の派遣社員として採用内定している二百五十人に対し、関連会社への転籍もしくは、入社後、二カ月の「待機」ののち、解雇すると通知しています。直接の内定取り消しではありませんが、「事実上、辞退に追い込むもの」と採用内定者を不安にさせています。

 シーテックは今年一月に技術者派遣会社三社を吸収合併し、新生シーテックとして事業再編しました。売上高は九百十二億円、技術社員数は約一万二千人の国内トップクラスの技術者派遣会社です。

 内定者は昨年十月に内定式を済ませ、合併があっても採用すると説明を受けていました。二月中旬までに、雇用通知書や入社式の手続きも終了しています。

 状況が一変したのは三月に入ってからです。四日、採用者に対し、グループ会社のプレミア・スタッフへの転籍に関する説明会が開かれました。「転籍同意書」が配布され、十五日までの提出が求められました。担当者は「採用を辞退する人は、ご連絡ください」と質疑応答もなく、電話連絡先を告げるだけでした。

 転籍先の処遇はシーテックと大きく異なっています。同意書を見ると、基本給は十九万円から十六万円に減額、労働時間、休日、休暇、退職についての詳細は記載されていません。

 転籍期間は原則一年ですが、「時期を見直す場合がある」とされ、延長も考えられます。復職する場合の賃金は転籍先の賃金に準ずる、つまり十六万円のままです。

 シーテックは現在、内定者に対し電話で確認を求めています。内定者によると、転籍に応じなくても入社はできるが、スタンバイ社員として二カ月の「待機」後、解雇対象になり、退職金はないと説明しているといいます。

 採用内定取り消しは「解雇権の乱用」になり、違法であるため、こうした方法を取ったとみられています。

 日本共産党の小池晃参院議員は二十四日の参院厚生労働委員会で同社の内定辞退の強要問題を取り上げ、舛添要一厚生労働相に調査と指導を求めました。厚労相は「強力に指導するとともに、学生の方から賠償要求があればきちんと対応させます」と答えました。

 シーテックに内定が決まっていた都内の学生(22)は大学で学んだことを生かしたいと専門職の就職をめざして、最終的につかんだ会社でした。「内定取り消しなら、はっきりと言ってほしい。宙ぶらりんの立場のまま四月を迎えるなんて絶対嫌です。将来設計を狂わされました。怒りより不安が大きい」

 シーテックは同社を含む関連三社の約四千人をリストラすると発表しています。(伊藤悠希)

悪質、国は指導を強力に

 米倉勉弁護士の話 シーテック社の今回の処遇は「転籍を承諾しなければ入社を認めない」というものだと聞いており、法的には「内定の取り消し」に当たります。学生にとって、新卒採用としての就職実現を強く希望するのは当然です。その時期に、その立場の弱さを逆手にとって低い賃金での転籍を強要するのは、内定取り消し以上に悪質ともいえます。

 国会で舛添厚生労働大臣が答弁したように、国は「強力に指導」してほしい。



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