2009年3月26日(木)「しんぶん赤旗」

主張

七生養護事件判決

創意尊重してこそよい教育が


 東京都立七生(ななお)養護学校(現・七生特別支援学校)の性教育に対する一部の都議と都教育委員会の行為を違法とした東京地裁判決に対し、東京都は二十三日、控訴しました。本当に子どものことを考えるなら、都議も都教委も判決を真摯(しんし)に受けとめるべきです。

「不当な支配」許されない

 同校の性教育への攻撃は、二〇〇三年の都議会で民主党の都議が「過激性教育」と決めつけ、非難したことに始まります。二日後、自民・民主の三人の都議が学校を訪れ、「感覚がまひしている」などと養護教諭を詰問しました。

 これを受けて都教委は性教育の教材を没収、多数の教員を「厳重注意」にしました。指導計画が変えられ、苦労して積み重ねてきた性教育ができなくされました。

 判決は、都議らの訪問を「政治的主義、信条に基づく性教育への介入・干渉」だとし、当時の教育基本法一〇条一項の「不当な支配」に当たると明快に断じました。

 旧教育基本法一〇条一項は「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」としていました。これは戦前、教育が軍国主義によってゆがめられたことへの反省からきたものです。〇六年の改悪で「国民全体に対し直接に責任を負って」の部分は削除されましたが、政治的介入を許さないための「不当な支配…」の趣旨は生きています。

 七生養護学校の性教育の出発点は、生徒の間で性的な問題行動が起きたことでした。「子どもを性犯罪の被害者にも加害者にもしたくない」という切実な課題に直面した教師たちは、議論と試行錯誤を続け、知的障害のある子でも分かるように性器のついた人形なども準備して、保護者の理解も得ながら、実践を進めてきたのです。

 この点で注目すべきは、都教委が同校の教員を「厳重注意」にしたことへの地裁の判断です。判決は性教育について「創意工夫を重ねながら、実践が蓄積されて教授法が発展していくという面があり、適否を短期間で判定するのは容易ではない」と指摘。「いったん不適切であるとして制裁的扱いがされれば、教員を委縮させ、創意工夫による教育実践の開発がされなくなり、発展が阻害されることになりかねない」とのべました。

 教員がそれぞれの学校の子どもの実態に応じて創意工夫してこそよりよい教育ができます。判決が示したように自由な実践を保障してこそ教育活動が発展します。

 東京都の教育行政はこの逆です。とくに石原都知事になって以来、都教委は現場の自由を奪う暴挙を繰り返しています。「日の丸・君が代」の強制による卒業式・入学式の画一化、職員会議での挙手・採決の禁止など、その例は枚挙にいとまがありません。

子どもの成長を第一に

 地裁判決は、都議らの「不当な支配」から教員を保護する義務が都教委にあったとのべました。現実には、都教委が特定の政治勢力と結びついて現場の自由を奪っているのです。都教委はその姿勢を、大本から改めるべきです。

 各地で行政などによる教育への介入が広がっているだけに、今回の判決は全国的意義があります。控訴に抗議し、判決を力に憲法に基づき子どもの成長第一に、教育の自由を守り発展させましょう。



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