2009年3月24日(火)「しんぶん赤旗」
ソマリア沖海賊問題
自衛隊派兵が「特効薬」?
自民・公明の危険な発想
ソマリア沖海賊問題を論議した二十二日放映のNHK「日曜討論」で公明党の山口那津男政調会長は、ソマリア沖周辺諸国による問題対処への協力について、「特効薬にはならない。漢方薬だ」と述べ、海上自衛隊派兵が問題解決の「特効薬」であるかのような発言をしました。これは、ソマリア沖海賊問題がなぜ発生しているかをまともに検討もしないで、自衛隊さえ出せばいいという極めて危険な発想です。
ソマリア沖海賊問題が、二十年近いソマリアの無政府状態や、米国など外国の軍事攻撃を伴う内戦を背景にして起こっており、その問題に対処しない限り根本解決がないことは、国際的に一致した見方です。軍事力による対処で問題が解決しないことは、米軍も認めています。
「海賊集団の幹部は別として、そのメンバーは、武力紛争と無政府状態に追い詰められた元漁民などのソマリア民衆だ。軍隊でけちらしても、食いぶちを確保するために、麻薬や武器の密輸など、他の犯罪に走るだけだろう」―あるアフリカ問題研究家は、こう指摘します。
続く和平の努力
ソマリア紛争では、東アフリカ七カ国で構成される政府間開発機構(IGAD)やアフリカ連合(AU)による粘り強い和平努力が続いてきました。そのもとで、これまでで最も広範な基盤に立つ暫定政権が今年に入って成立し、和平への機運は高まっています。
ソマリアの政治情勢が安定すれば海賊が減少することは、二〇〇六年に証明されています。
海賊問題そのものの対処でも、マラッカ海峡での海賊激減の教訓に学んだ、域内諸国による取り組みが強化されています。
憲法九条をもつ日本は、こういう活動への協力をすべきです。日本はこの点で、すでに誇るべき実績をもっています。
「灰色の船」では
ところが政府・与党は、こうした根本問題をまともに検討することなく、海自派兵だけを最優先させました。「灰色の船(軍艦)を見ると海賊は逃げる」(中谷元・自民党安全保障調査会長のNHK討論での発言)といいますが、一時的に「逃げた」ところで、問題が解決するわけではありません。
現に国際海事局(IMB)によれば、ソマリア沖の海賊事件は今年、三月二日までに二十五件も起こっています。過去最高だった昨年の百十一件を上回るペースです。各国の艦船が派遣されるもとで、海賊はむしろ増加しているのです。
海自派兵が海賊問題対処の「特効薬」でないことは事実で示されています。日本は、「初めに派兵ありき」でなく、周辺国の沿岸警備強化への財政的・技術的支援、ソマリア内戦終結に向けた政治的・経済的な国際協力を促進する外交努力をこそ、粘り強く進めるべきです。(坂口明)
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