2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」
広がる懸念
イスラエル、イランに強硬姿勢
野党“核廃棄こそ”
米国は対話姿勢に
【カイロ=松本眞志】米国の民間研究機関や英国のメディアが最近、イスラエルがイランに対する「秘密戦争」をエスカレートさせ、核施設への軍事攻撃を検討していると相次いで報じています。
「軍事攻撃検討」
米国の「戦略国際研究センター」は十四日、イスラエルがイランに地対地弾道ミサイルを使用する可能性があると指摘。ワシントン近東政策研究所も今月に入り、「イスラエルはイランに対する軍事攻撃を検討している」との報告をまとめました。英紙デーリー・テレグラフは二月十六日、イスラエルが核開発阻止のために、同国の情報部員が暗殺や破壊活動などの「秘密戦争」をイラン国内でエスカレートさせると報じています。
これらは、オバマ米政権がイランとの対話に踏み出すなかで、イスラエルが単独で武力によるイランの核開発阻止の可能性をさぐっているとしています。
イランのアハマディネジャド大統領がナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人虐殺)の事実を疑問視する発言を繰り返していることはイランに対するイスラエルの不信を強めているとみられます。
イスラエルの政府系調査機関「エルサレム公共問題センター」が出した宣伝誌『イラン、ヒズボラ、ハマスと世界聖戦』は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやパレスチナのイスラム武装抵抗組織ハマスが勢力を増し、イスラエルの安全の脅威になっていると指摘。「地域覇権の野望を阻止する西側世界の努力を無力化するために、イランは独自の核兵器を開発させる危険を冒そうとしている」と述べています。
米国の親イスラエル圧力団体「米国ユダヤ人委員会」も『イランの核願望を阻止する』と題するパンフレットで、「イランは結局、イスラエルのない世界を要求している」と結論づけています。
交渉で解決せよ
これに対し、米国のデニス・ブレア国家情報長官は十日、米上院軍事委員会で、イランは核開発を核兵器生産と結びつける結論を下していないと発言。最近のミサイル実験も核弾頭搭載を想定したものとはいえないと述べ、イスラエルをけん制しました。
イスラエル国内でも、イランの脅威をあおる政府や米国のイスラエル・ロビーの動きに不安や警戒の声があがっています。
野党ハダシュ(平和と平等のための民主統一戦線)のバラケ書記長は、イランの核兵器保有に反対すると同時に、イスラエルが保有する核兵器の廃棄を訴え、中東非核地帯創設を呼びかけました。
ヘブライ大学のゼエブ・スターンヘル政治学教授は本紙の問いに対し、「イランの核問題は武力によらず、交渉によって解決するべきだ」と訴えました。
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