2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」

明日への視点

真に「対等な日米関係」とは

「伊達判決」50周年

藤田 健


 一つの判決が、三月三十日に五十周年を迎えます。米軍駐留を「憲法上許すべからざるもの」と断罪した一九五九年の砂川事件・東京地裁判決、いわゆる「伊達判決」です。

 米軍立川基地の拡張に反対し、「土地に杭(くい)は打たれても、心に杭は打たれない」というスローガンを生み出した砂川闘争。事件は一九五七年七月、壊れた柵から米軍基地内に四、五メートル入ったというだけで、二カ月後に約二十人が逮捕され、安保条約にもとづく刑事特別法で七人が起訴されたものでした。

 判決で伊達秋雄裁判長は、普通なら軽犯罪法の対象なのに、格段に量刑が重い刑事特別法で裁く妥当性があるかを真正面から検討しました。憲法前文や九条の崇高な理想は形式的なものではないとして、米軍駐留によって「わが国が自国と直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍がわが国に及ぶ虞(おそれ)は必ずしも絶無ではない」と指摘。その上で、米軍は九条が禁じる「戦力」にあたると違憲判決を下したのです。

 検察は、高裁を飛ばして最高裁に「跳躍上告」し、五九年十二月最高裁が伊達判決を破棄し、地裁に差し戻し。差し戻し審では七人の被告に罰金刑が言い渡されました。

 ―

 この判決があらためて注目を浴びたのは、昨年四月、国際問題研究者の新原昭治さんが米公文書館で当時の米政府解禁文書を発見したことがきっかけ。文書では、当時のマッカーサー米駐日大使の裁判への介入と日本側の従属ぶりが明らかになりました。

 ―判決の翌日、大使が藤山愛一郎外相と秘密会談。米側が「跳躍上告」を提案していた。

 ―上告後、大使は田中耕太郎最高裁長官と密談。「本件には優先権が与えられている」と短期で判決を出す言質を得ていた、などです。

 今月五日には、当時の被告・土屋源太郎さんらが内閣府、外務省、最高裁に砂川裁判に関する閣議議事録、日米協議記録などの情報開示を請求。その後、国会内で集会を開きました。

 新原さんは、このほかにも米兵犯罪で日本側が「第一次裁判権」(優先的に裁判できる権利)を放棄する密約などさまざまな秘密文書を発見し、告発してきました。その密約群は底知れません。

 表にみえる安保条約と地位協定だけでも、米軍にはさまざまな特権があります。日本全土どこにでも基地をおくことができ、その基地(自衛隊との共用含め百三十三)を自由勝手に使えます。裁判権はじめ国内法の適用除外など治外法権的な特権もさまざまあります。

 そのうえ、表には出ない日米合同委員会議事録と合意事項があり、さらに密約がある―。新原さんは「日本の対米従属は、二重底どころか三重底、四重底になっている」と指摘します。

 ―

 いま政界では、日米関係の「対等」論が出ています。民主党の小沢一郎代表が「(米軍は)第七艦隊がいれば十分だ。あとは日本が極東での役割を担っていく」などとのべ、「対等な日米関係を」と発言したことがきっかけです。自民党などは小沢発言を“米軍撤収論”とみなして、「日本の安全を考えていない」などと、攻撃しています。

 しかし、小沢氏の発言は、クリントン米国務長官との会談で「日米同盟をさらに強固にする」と合意したこととセット。日本が軍事上でも役割分担を大きくしていくことで、「対等」な関係をつくろうというのが小沢氏の持論です。

 「三重底、四重底」もの従属構造がある日米同盟をそのままにしながら、「対等な日米関係」が築けるのか―。小沢氏にも自民党にも根本的にその観点が抜け落ちています。従属構造をそのままに軍事的役割分担を大きくしたら、米国の世界戦略の一翼を担う方向での軍拡路線が待っているだけです。

 先の集会で、もう一人の被告の坂田茂さんは「来年は現行安保条約発効から五十年。私たちのたたかいは、安保条約をなくすたたかいにつながる」と発言しました。

 本当の「対等な日米関係」は、数々の密約を含む日米軍事同盟をなくしてこそ築けるのではないか―。集会を取材しながら、そう痛感しました。(政治部長)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp