2009年3月20日(金)「しんぶん赤旗」
米軍特権の地位協定
比で廃棄世論高まる
米兵犯罪裁判きっかけ
フィリピンで米比合同演習に参加する米兵に特権的地位を認めた「訪問米軍の地位に関する協定(VFA)」の廃棄や見直しを求める論議が高まっており、アロヨ政権の対応が問われています。(宮崎清明)
論議のきっかけは、フィリピン人女性を暴行して一審で終身刑を宣告された元沖縄駐留米海兵隊員が米国側に引き渡されていた問題で、最高裁判所が二月十一日、身柄をフィリピン側に戻すため交渉するよう外務省に命じたことです。
上院議員七人は不平等なVFAの廃棄を政府に要求する決議案を共同で提出、上院外交委員会の審議にかけられています。提案者の一人パンギリナン議員は、「アロヨ大統領は、今こそオバマ米大統領に対し対等平等な関係樹立を訴えるべきだ」と発言。下院でも同様の決議案が五人の議員から共同で提出されています。
米側は、VFAの見直しを「時期尚早」(ケニー駐比米大使)としています。三月十四日にはオバマ大統領がアロヨ大統領と電話会談し、VFAの維持継続を強調しています。
米海兵隊員は二〇〇六年十二月、フィリピンの地方裁判所で終身刑判決を言い渡され、マニラ首都圏マカティ市の拘置所に収容されました。しかし、米国政府が、罪を犯した米兵の勾留権限は「訴訟手続きが完了するまで」米軍当局にあるとVFAが規定していると主張し、控訴した米海兵隊員はマニラの米大使館の保護下に置かれました。
非核フィリピン連合のコラソン・ファブロス事務局長は本紙の電話取材に「VFAは米国の上院には諮られておらず条約とはいえない。フィリピン憲法では、外国軍の駐留は両国の上院が批准した条約の下でしか認められない。主権と人権を守る国民的世論と運動を起こしていく」と語っています。
フィリピンと米軍 フィリピンでは一九九一年九月に上院が新たな米軍基地条約の批准を拒否し、翌九二年に米軍は撤退しました。しかし、米比相互防衛条約(一九五一年調印)に基づく米比合同演習に参加する米兵を保護するため「訪問米軍の地位に関する協定(VFA)」が九八年に締結され、翌九九年にフィリピン上院で批准されました。
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