2009年3月20日(金)「しんぶん赤旗」

主張

イラク開戦6年

軍事一辺倒は何も解決しない


 米軍が二〇〇三年三月二十日、イラクへの侵攻を開始して六年がたちました。戦争はイラクに大きな犠牲をもたらしました。死者は百万人にも上るとみられています。戦火に追われ国内外で厳しい生活を強いられている難民は四百万人にもなります。

違法な戦争明らか

 ブッシュ前米政権は国際世論の反対を押し切って、国連安全保障理事会の同意のないまま開戦を強行し、イラク政権を転覆しました。軍事攻撃を受けていないのに他国に侵攻するという「先制攻撃戦略」に沿ったもので、あからさまな国連憲章違反の戦争でした。

 米国は侵攻の理由としてイラクが大量破壊兵器を保有しているとか、テロ集団とつながりがあるなどと主張しました。しかし、ブッシュ大統領が後に設置した独立調査委員会は「ほとんどすべてが完全な誤り」と結論付けています。

 違法な戦争に一方的に突入したことの誤りが鮮明になる中、ブッシュ政権は国際的な孤立を深めました。強大な軍事力を背景にした米国の「一国覇権主義」は無残な破たんをみせています。

 テロを含む世界のさまざまな問題は軍事一辺倒では解決できず、また米国一国では解決できないことが、誰の目にも明らかになっています。

 「チェンジ」の呼び声のもと米国でオバマ政権が生まれた原動力も、イラク戦争に対する米国民の批判の高まりにあります。

 多国籍軍の駐留を認めた国連安保理決議の期限は昨年末に切れました。オバマ米大統領は二月下旬、戦闘部隊を来年八月末までに撤退させると発表しました。ただ、その後も最大五万人の兵力を残すとし、イラクの治安状況しだいでは「戦術上」の変更もありうると述べています。

 イラク国民の多くが外国軍の撤退を望んでいることは世論調査にも示されています。米国はすみやかに完全撤退すべきです。同時に、イラク国民の手で平和な国づくりが進むよう、国際社会の支援が重要です。

 日本政府は、イラク戦争を機に起きている世界の大きな変化に目をふさいだままです。

 開戦当時、小泉純一郎首相はいち早くブッシュ米大統領への支持を表明し、国民の反対と憲法上の制約を踏みにじって自衛隊をイラクに派遣しました。その姿勢は、米国と同盟関係にあるドイツやフランスが戦争に強く反対したこととまったく対照的です。

問われる日本政府

 小泉首相はイラクが大量破壊兵器を保有していると米国への支持を正当化しました。根拠を示すよう求められた福田康夫官房長官(当時)が「むちゃなことを言うな」と述べたように、小泉政権は事実に合わず法的にも成り立たない開き直りに終始しました。

 後を継いだ安倍、福田、麻生の各政権もイラク戦争への反省を示していません。自公政権は日米同盟こそ基軸だとして、いまなお米国のめがねだけから世界をみる姿勢を脱却できないでいます。

 米国を含む世界が大きな転換をとげている中で、日本政府だけが米国への卑屈な追随姿勢を変えないでいることはきわめて異常です。日本政府は対等・平等の日米関係を確立するとともに、平和な国際秩序づくりに貢献すべきです。



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