2009年3月18日(水)「しんぶん赤旗」

主張

エルサルバドル選挙

米国のくびき破る歴史的変革


 中米エルサルバドルの大統領選挙で左翼・ファラブンド・マルティ民族解放戦線党(FMLN)が勝利しました。エルサルバドルは一九八〇年代の内戦で米国の軍事干渉を受け、内戦終結後も政治的、経済的に米国の支配のもとにおかれてきました。

 ベネズエラでチャベス政権が誕生して十年。この間、自主的な変革の波は中南米全域に広がってきました。今回の選挙で、米国の忠実な同盟国であり続けてきたエルサルバドルでも、自立した国づくりを求める国民の意思が明確に示されました。

米国の支配下で

 選挙では「変革」を掲げたFMLNのマウリシオ・フネス候補が、民族主義共和同盟(ARENA)のロドリゴ・アビラ候補(元国家警察長官)を破りました。

 エルサルバドルは隣国ニカラグアとともに、し烈な内戦で知られます。大土地所有者による収奪と軍事独裁による弾圧に抗して立ち上がったのがかつての解放運動指導者の名を冠したFMLNでした。

 一方のARENAは、内戦中に解放運動参加者を次々に暗殺した「死の部隊」の頭目だった極右のダビソン大佐が創設しました。内戦は九二年に終結しましたが、ARENAは今日に至るまで二十年間政権を握ってきました。

 エルサルバドルは米政策に忠実に追随してきました。ブッシュ前米政権の要請に応じてイラクに派兵し、多国籍軍の駐留を認めた国連安保理決議の期限である昨年末まで派兵を継続した中南米唯一の国でした。

 経済でも米国の押し付けた弱肉強食の新自由主義政策を積極的に推進し、貧富の格差が拡大しました。かつてコメを輸出したこともあったこの国で、米国からの穀物輸入が急増し、農業が崩壊しました。その結果、数年来の世界的な食料高騰では都市の中間階層でも食料が入手できない事態に陥りました。電力に続いて水道事業も民営化が計画され、生活を脅かすとして広範な国民が反対しています。

 ARENAの長期支配を可能にしてきたのが米国の干渉です。内戦終結後に実施された三度の大統領選挙で米国は、FMLNが勝利すれば対米関係が悪化し、在米エルサルバドル人による本国への送金が困難になるなど経済的に大打撃を受けると主張して、有権者を威嚇しました。

 今回の選挙でFMLNは米政府に対して、政権党を利する見解表明をしないよう求めました。米政府も中南米と世界での一国覇権主義の破たんに直面して、選挙での中立と次期政権との協力を約束しました。米国は「公正選挙の実施」を他国への干渉の名目にしばしば使ってきましたが、今回の選挙は米国の干渉を排してこそ公正選挙が実現することも明らかにしています。

中米に広がる変革の波

 FMLNは対外政策で民族自決と不干渉、平和と連帯、地域統合などの諸原則をうたっています。選挙結果は中南米の平和の地域統合を一段と強めるものです。

 米国の干渉を排して自主的、民主的な国づくりをめざす政治変革の波は、南米から中米のパナマ、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルと続き、さらに広がる様相をみせています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp