2009年3月17日(火)「しんぶん赤旗」

女性差別撤廃条約 国連採択から30年

日本の遅れは深刻

政府に情報提供求める国連


 国連加盟国百九十二カ国のうち、百八十五カ国が批准している女性差別撤廃条約。一九七九年十二月の国連採択から今年は三十年を迎えます。一方、六月のILO(国際労働機関)総会では、一九八五年以来、二十四年ぶりに「ジェンダー(性差)平等」について討議されます。男女の同権・平等が世界全体の共通のルールとなるなかで、日本のとりくみが問われています。(浦野恵子)


 「女性差別をなくすための政府の対策、行動が何も示されていない。情報を提供せよ」―。国連の女性差別撤廃委員会は、昨年十一月二十日、日本政府にこんな質問を出しました。同委員会は、女性差別撤廃条約にもとづく両性の平等を推進し監督する機関です。七月二十日開会の同委員会(第四十四会期)で、日本の進ちょく状況を審査します。質問は、審査のための準備作業です。政府は今年三月になってようやく三十項目に及ぶ質問の日本語訳を内閣府男女共同参画局のホームページに載せました。通常、審査の三カ月前とされる回答期限が迫っています。

審査のポイント

 審査のポイントの柱は、二〇〇三年七月の女性差別撤廃委員会の最終見解です。最終見解は、コース別雇用やパート・派遣による賃金格差への懸念、家庭と職業を両立させるための対策の強化、家庭内暴力、戦時「慰安婦」問題の解決、民法上の差別規定の廃止、意思決定過程への女性の参画の遅れなど、社会全体の根本にかかわる問題を指摘しています。

 この見解をうけたとりくみを、日本政府は第六回定期報告書にまとめ、昨年四月に同委員会に提出しています。しかし、報告は、差別是正にたいする政府の責任を棚上げしたものが目立ちます。

 たとえば、結婚、家族生活にかかわる民法改正です。〇三年の見解では、日本の民法が、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、夫婦の氏の選択などで、「差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明」していました。これにたいし、政府報告書は、世論の動向の記述に終わっています。同委員会の質問は、「女性に対して差別的な民法の規定を廃止するために政府が取った具体的な行動に関して、何も示していない」と指摘し、情報提供を求めています。

賃金の男女格差

 賃金の男女格差も審査の焦点です。

 政府報告書も「(男女)格差は、国際的に見て大きいと認識している」とのべています。しかし、実際の格差解消へのとりくみは、「労使が自主的にとりくむためのガイドラインの作成」などにとどまっています。女性差別撤廃委員会の質問は、「他の施策について、詳しく述べてほしい」と、いらだちを隠せません。

 女性にたいする賃金差別については、ILOの監視機構の一つ、条約勧告適用専門家委員会からも、繰り返し意見が寄せられています。

 日本は、ILOの同一報酬条約(第一〇〇号条約)を批准しています。〇七年六月のILO総会は、日本政府にたいし、「同一価値労働に対する男女の同一報酬を法律上も事実上もより積極的に促進せよ」という強い要請を行っています。しかし、その後、政府と労働組合などから寄せられた情報から、賃金の男女間格差が依然大きく、むしろ、二〇〇四年以来拡大していることが明らかにされました。

 女性のフルタイム労働者の時間当たり所定内現金給与は〇四年で男性の68・8%だったのが、〇六年には67・1%。製造業では男性の58・9%、金融保険業では54・8%です。

 条約勧告適用専門家委員会は、これらの事実に懸念を表明し、日本政府にたいし、男女同一価値労働同一報酬の原則を規定するための法改正の措置を求めています。

 ILOのこれらの指摘は、女性差別撤廃委員会の委員にも提供されており、七月の審査でも重大視されます。

 女性差別撤廃委員会は、条約と政府報告書が国内でどう位置づけられているかについても質問しています。「報告は、政府により採択されたか、また、国会に提出されたかを、説明されたい」と質問しています。

 内閣府や外務省の担当者によると、政府報告書は、政府採択にあたる閣議決定はしておらず、参院外交防衛委員会委員に配布したものの、国会には提出(報告)していないとしています。


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