2009年3月17日(火)「しんぶん赤旗」
主張
春闘大詰め
不況の打開に賃上げも雇用も
ことしの春闘は今週、自動車、電機などの大企業が相次いで回答を出す、最初のヤマ場を迎えています。
貧困と雇用破壊が深刻化する中で、雇用確保とともに賃上げ(ベースアップ)要求を掲げる労働組合が増える一方、まだ余力のある大企業までが雇用破壊に加えて「賃下げ」もといいだすなど、きびしい状況となっています。
不況打開のためには、大企業にためこんだ利益をはきださせ、賃上げも雇用の確保も認めさせていくことが重要です。
外需頼みから内需主導に
日本の労働者は長年にわたって賃金が抑制され、増税や社会保障などの負担増で生活が圧迫されてきたうえ、「規制緩和」にともない派遣など非正規の労働者が急速に増えたことから、低賃金で不安定な働き方を余儀なくされています。一九九七年からの十年間を見ても、製造業の大企業の経常利益は八・二兆円増え、株主への配当は四・〇兆円増えているのに、従業員の給与は二・三兆円減っているというありさまです(財務省「法人企業統計」から)。
しかも、昨年来の金融・経済危機で、労働者には賃金カットや残業減など大幅な収入減が押し付けられ、「非正規切り」などの雇用破壊が正社員にまで及んでいます。労働者の暮らしは急激に悪化しており、賃上げと雇用の確保は、いよいよ切実な要求です。
日本経済の落ち込みは、アメリカや欧州諸国よりケタ違いに急速です。これは、小泉純一郎内閣以来の「構造改革」路線が国民の生活を悪化させ、内需を弱め外需に依存する、ゆがんだ経済構造をつよめてきたためです。また、雇用の悪化は、これまでの不況期に比べても急速で大幅です。大企業が景気のいいときには低賃金で不安定な「非正規」を増やして大もうけし、景気が悪くなると文字通り使い捨てのように解雇しているためです。暮らしを立て直し、外需頼みから内需主導の経済にしていくためにも、賃上げと雇用の確保は不可欠です。
大企業はいま、「派遣切り」「非正規切り」などの無法な雇用破壊を押し付ける一方、「ベアに耐えられる企業はほとんどない」(御手洗冨士夫日本経団連会長)などといいだしていますが、大企業にはまだ、賃上げや雇用の確保にこたえる体力は十分あります。製造業の大企業だけでも、利益をためこんだ内部留保は、昨年三月期の決算で百二十兆円もありました。そのごく一部を使えば、労働者の賃上げも雇用の確保もできます。
一部の大企業はベースアップどころか定期昇給の見直しまで口にしていますが、企業の「総額人件費」を増やすわけでもない定昇まで引き下げようというのは、言語道断な暴挙です。
大企業の社会的責任
雇用を確保し、安心して暮らせるようにするのは、企業の大切な社会的責任です。まだまだ余力がある大企業がもうけをためこんだままで、労働者の賃金は引き上げず、雇用も減らすというのでは、企業としてその責任を果たしたことにはなりません。
とりわけ不況のいまこそ、大企業に社会的責任を果たさせることが重要です。労働者と国民が力を合わせ、大企業に賃上げと雇用確保を求める大切な正念場です。
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