2009年3月16日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

介護保険料

引き下げの世論大きく


 四月から実施の第四期の介護保険料改定を前に、日本共産党は二月に介護制度の抜本的な見直しを求める提言を発表し、民主団体などと協力して保険料引き下げなどを求めて運動しています。厚生労働省ですら介護給付費準備金を取り崩して保険料引き上げの抑制(別項)を求めているもとで、川崎と大阪での運動を報告します。


署名が計画変えさせた

川崎市

 川崎市社会保障推進協議会は今月初め、「介護保険料の引き下げ、利用料減免を生活保護基準の130%まで拡大すること、介護人材の実効性ある確保策を」の請願を二万人ほどの署名を添えて市議会に提出しました。一月十五日に開かれた市社保協主催の「川崎介護保険三つの改革・変えよう川崎市政―学習・スタート集会」から短期間で集めたものです。

 集会で市社保協の田中国雄事務局長が「介護保険の充実は高齢者だけでなく若い人も含むみんなの願い」と署名運動を提起したように、市民の熱い思いです。

37億円の黒字

 川崎市の阿部孝夫市政はこの間、特養ホームなどの基盤整備を大幅に遅らせ、五千人以上の待機者を放置してきたのをはじめ、生活支援型食事サービスからの要支援者の除外、要介護者生活支援ヘルパー事業の派遣日数の削減、寝たきり高齢者介護援助手当の廃止など次々削減しました。三年間の介護給付費準備基金は三十七億円の黒字になりました。

 巨額な黒字は六十五歳以上の第一号被保険者が納めた保険料です。そのなかで介護認定を受ける人は16%ほど。ほとんどの方は保険料を掛け捨てしているのです。見直しの今こそ、保険料を払った高齢者に最大限還元することは当然で、厚労省もそう指導しています。

 市は当初、四月から実施の第四期介護保険料(基準月額)を9%引き上げる四千四百円を示しました。しかし、市民の大きな運動で変更を余儀なくされ、保険料を八段階から十段階にし、基金を68%取り崩して第五段階を基準額として第三期同様の四千三十三円を提案しました。

 市が一昨年行った高齢者実態調査では、八割の方が「保険料が高い」と悲痛な回答をしています。三年ごとの保険料引き上げで、滞納件数は七年で五倍の五万八千五百五十五件にのぼります。

 基金を全額取り崩せば保険料はさらに月額百二十円引き下げられ、それがどんなに高齢者を励ますことでしょう。ところが、市議団の追及に市は「準備基金は計画期間内に介護給付費が計画値を上回った場合に備えて今回全額取り崩しを行わない」と国の方針にも反する答弁をするだけです。

基準緩和ぜひ

 生活困窮者の利用料減免は、昨年十二月時点で三十六人。〇三年の八十九人をピークに激減しています。党市議団は収入や預貯金の限度額の引き上げを求めましたが、「生活保護基準と同等の条件になっているため基準を緩和する考えはない」と冷たく答えました。しかし実態は、川崎市の基準は七万七千円で生活保護基準(六十九歳単身者の場合七万九千五百三十円。これに家賃は五万三千七百円以内まで認められている。困窮者の利用料減免には家賃分は一切なし)よりはるかに劣悪基準なのです。

 市民が提出した請願審査は十二日に行われ、委員会では日本共産党は奮闘しましたが、残念ながら不採択にされました。秋の市長選では、党と民主団体が推す岡本一さんで市民の願いがかなうあったか市政への転換がどうしても必要です。(川崎市議・市古てるみ)

取り過ぎた分返して

大阪府

 「大阪・介護保険料に怒る一揆の会」はいま、「余った介護保険料を返せ!」「第四期保険料を下げろ!」の運動を取り組んでいます。

06年に35%増

 大阪府では、三年前にすべての自治体が介護保険料を引き上げ、平均35%もの大幅な引き上げによって全国で五番目に高い地域となりました。

 一方で、介護保険制度改悪によるサービスの取り上げや施設整備の抑制など一連の給付抑制のため、各自治体の介護保険財政は計画よりも給付(利用)が落ち込む事態となっています。その結果、多くの自治体では介護保険料がとりすぎとなっています。

 二〇〇八年度末には大阪府内自治体の余った介護保険料(介護給付費準備基金)は、百九十九億六千六百十八万円にも上っています。また、各自治体の介護保険料の一部を拠出して大阪府に設置された「介護保険財政安定化基金」も95%が活用されず、百九十三億三千七百二十九万円がため込まれています。

 一揆の会は、大阪社会保障推進協議会、年金者組合大阪府本部と共同して、今年一月二十六日には「学習・意思統一集会」を開き、各自治体で議会や当局に向けた運動の取り組みを開始しました。各自治体で社保協や年金者組合が中心になって議会請願や要請が取り組まれました。

 二月十二日には一揆の会代表による大阪府、大阪市、大阪府市長会に対する要請を行いました。

 現時点で府内四十一自治体のうち、二十一自治体が第四期保険料を引き下げる予定となっています。一方で七自治体が引き上げ、据え置きも七自治体あり、平均すると全体として八十五円(1・9%)の引き下げとなっています。

基金取崩しを

 一揆の会では、今後さらに、保険料引き下げを求める運動を続けることにしています。

 とくに余った準備基金を全額取り崩さない十九自治体に対しては「とりすぎ介護保険料を返せ」のたたかいを地域で呼びかけています。(介護保険料に怒る一揆の会事務局長・日下部雅喜)


 介護保険料に怒る一揆の会 「年金天引きの介護保険料に異議あり!」を合言葉に2001年に大阪で結成されました。現在会員400人。大阪の高齢者に呼びかけ、介護保険料決定通知に対する「集団不服審査請求運動」を取り組み、毎年1000人規模で審査請求を行っています。08年度は、後期高齢者医療保険料と国民健康保険料の年金天引きに対する不服審査請求と合わせて1700件以上の審査請求となりました。


厚労省の準備基金取り崩し要請文書

 厚生労働省は昨年8月21日、全国介護保険担当者会議のなかで介護給付費準備基金取り崩しの次の要請文書「第4期の保険料設定について」を出しています。

 介護給付費準備基金については、従前からご連絡しているとおり、各保険者において最低限必要と認める額を除き、基本的には次期計画期間において歳入として繰り入れるべきものであると考えている。

 即ち、・当該基金は、3年間の中期財政運営を行うことから生じる剰余金を適切に管理するために設けられているものであること、・介護保険制度においては、計画期間内の給付に必要となる保険料については各計画期間における保険料で賄うことを原則とし、保険料が不足する場合には財政安定化基金から貸付等を受けるものであること、・被保険者は死亡、転居等により保険料を納めた保険者の被保険者ではなくなる場合があること 等から本来は当該基金が造成された期における被保険者に還元されるべきものであり、基本的には次期計画期間において歳入として繰り入れるべきものである。

 したがって、現在、当該基金の残高を有する保険者にあっては、これをできる限り取り崩すものとし、第4期介護保険料基準額の最終決定に当たっては、保険料の上昇を最小限のものとすることについて、十分検討されたい。(以下略)



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