2009年3月14日(土)「しんぶん赤旗」
米国抜き平和協力地域へ始動
南米防衛理事会が初会合
UNASURの12カ国参加
【メキシコ市=島田峰隆】南米諸国連合(UNASUR)の国防相は、九、十の両日、チリの首都サンティアゴで「南米防衛理事会」の初会合を開きました。ブラジルが創設を提唱してから十カ月、米国の参加しない南米独自の安全保障機構が始動しました。
会議にはUNASUR加盟の十二カ国すべての国防相が出席し、サンティアゴ宣言を全会一致で採択しました。
相互信頼を強化
宣言は、南米を「平和と協力の地域」「民主主義の安定と諸国民の統合発展の基礎、国際平和への貢献の地域」とし、「軍事分野での地域協力を強める」ことを目的に掲げています。
具体的には、防衛政策の相互交流、各国の軍事費や軍事関連支出の情報共有、自然災害時の活動協力などを進めます。報道によると、武器購入にかんする情報共有は、これまでチリとアルゼンチンの二カ国間でしか行われていませんでした。
ブラジルのジョビン国防相は、「古典的な軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)のような同盟にはならない」と強調。チリのゴニ国防相も「欧州のような軍事力を追求するのではなく、統合、対話、協力を通じて相互信頼を強化することが目的だ」とメディアに説明しました。
キューバ問題も
同理事会は、「米国の裏庭」とされてきた南米諸国が軍事的にも米国離れを強める動きとして注目されています。宣言には対米関係についての言及はありませんが、会議では多くの国が米国に対中南米政策の見直しを迫りました。焦点は、米国が一九六〇年代から続ける対キューバ経済封鎖の解除です。
メキシコ各紙によると、封鎖解除を求めたのは七カ国。「多極化した現在の世界では米国と中南米の間には新しい関係がふさわしい」(エクアドル)、「封鎖はオバマ新大統領が解決すべき懸案事項だ」(アルゼンチン)などの発言が相次いだといいます。
理事会開催に先立って、米軍のマイケル・マレン統合参謀本部議長がブラジル、チリ、コロンビアを訪問しました。ブラジルのジョビン国防相は、対キューバ封鎖の解除が中南米関係の改善には不可欠だと、同議長に直接伝えたことを明らかにしました。
UNASUR加盟国 アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、ガイアナ、スリナム、コロンビア、チリ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビアの12カ国。