2009年3月11日(水)「しんぶん赤旗」
主張
農地法改定
今の担い手が展望持ててこそ
麻生内閣は農地法改定案を今国会で成立させようとしています。改定案は、農政のあり方の根本にかかわる極めて重大な問題を含んでいます。
株式会社への利用開放
農地法は、戦前の地主制度が農民を無慈悲に収奪したことへの反省と教訓からつくられました。農地を主な生産手段とする農業の特性を踏まえて、自ら耕す者が農地を所有し利用することが最も適切だという「耕作者主義」を、法律の原則に据えてきました。
それを保障するため、所有権の移転や賃貸借、他用途への転用ルールを設け、法人の「所有」や「利用」は農業者を主体に一定の条件を満たす農業生産法人に限り、利潤追求を目的とする株式会社の参入を規制してきました。
今回の改定案は、この農地利用の原則を根本から転換し、「営農意欲がある」株式会社を含むどんな法人にも利用を認めています。
政府が農地法改定の最大の口実にしているのは、増大する耕作放棄地を減らし、農地の利用を拡大するということです。
しかし、農地が荒廃し、耕作放棄地が増えた原因は農地制度にあるのではありません。地域では、請け負い耕作や集落組織などで、農地の利用・生産を維持する懸命な努力が行われています。それでも廃業が増えるのは、どうしても収支が引き合わないために営農を断念する農家が増え、後継者が育たないからです。この根本問題を放置したまま耕作を義務付けても耕作放棄は無くなりません。
財界や一部の研究者は、生産コストに見合う価格保障などは無駄な生産を増やすと攻撃する一方で、耕作放棄や日本農業が国際競争力を持たない原因が現行制度にあるとして、農地法の廃止、営利企業への農地の開放をしつこく求めてきました。それを受けて、自公政府も、貸借による企業参入の条件を緩和してきました。
営利企業の参入に道を開いても農地利用が進んで生産が拡大する保障はありません。輸入自由化の圧力や価格政策の放棄が進む中で、これまでに参入した企業の多くが赤字経営に陥っています。営利企業が収益性の低い稲作を実際に手がけるのは、経営効率の有利な一部地域に限られ、採算の合わない耕作放棄地には見向きもしないでしょう。何より、大資本が資力にものをいわせ、現にさまざまな生産に励んでいる農家や、農業生産法人に取って代わる危険の方がはるかに大きいでしょう。
財界・政府が農地利用の規制緩和に続いて、所有の全面開放を狙っていることも明白です。
それは、専業・兼業、高齢者など多様な担い手が携わる地域農業や集落の共同を壊し、日本の自給率向上や農地の有効利用、農村の活性化に新たな障害をもたらす恐れがあります。
耕作者主義を生かして
必要なことは、いまがんばっている農業者が展望を持てる農政に転換するとともに、地域に定着し、個人、農業生産法人や共同利用組織として自らが生産に携わる人を中心に、青年や他産業からの新規参入を含めて農業生産の担い手を確保することです。
法案審議では、耕作者主義の基本を生かしながら、地域農業を維持・発展させる農地政策・制度を探求することを強く求めます。
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