2009年3月10日(火)「しんぶん赤旗」
主張
「西松」違法献金事件
政治家の疑惑徹底してただせ
準大手ゼネコン「西松建設」からの違法献金の疑いで小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が逮捕された事件は、同じく巨額のパーティー券を買ってもらっていた二階俊博経済産業相らへの捜査の波及が予想される事態です。
「西松」から政治資金規正法に違反する可能性がある献金を受け取っていた政治家は、小沢氏や二階氏にとどまらず、民主、自民の多数の政治家に及んでいます。捜査当局の徹底究明とともに、これらの党や政治家が、自ら疑惑にこたえることが急務です。
事務方トップ発言の責任
こうしたなか、事件に関連して先週末、「自民党側は立件できない」などと発言した「政府高官」が元警察庁長官の漆間(うるま)巌官房副長官だったことが明らかになり、漆間氏は九日の参院予算委員会や記者会見で弁明しました。
捜査当局でもない政府関係者が個々の事件の見通しについて発言すること自体通常でないのに、発言したのが内閣官房副長官となればその重大性は明白です。官房副長官というのは政府の事務方のトップとして、検察が所属する法務省など各省庁を束ねる立場です。そのうえ漆間氏は元警察庁長官で、文字通り捜査のプロです。
こうした経歴と立場にある漆間氏が、捜査の方向性にかかわる発言をするなどというのはもってのほかです。しかも民主党とともに疑惑の渦中にある自民党を捜査の対象外に置くかのようにいったとすれば、悪質な捜査妨害であり、疑惑の解明を妨げるものです。
たとえどの党であれ、違法な献金を受け取った政治家が捜査の対象となるのを逃れることはできません。同時に捜査の結果いかんにかかわらず、政治家は疑惑がもたれたというだけで自ら説明し、疑惑を解明する責任を負います。
「西松建設」からの違法献金にかかわっては、小沢氏ら民主党議員とともに、現に閣僚である二階経済産業相の政治団体や森喜朗元首相ら自民党の多数の議員が法律に違反して企業献金を受け取っていた疑惑が指摘されています。それだけでなく、自民党の政治資金団体である国民政治協会自体がダミーの政治団体から献金を受けとり、「西松」と同じ住所で報告を届け出ていたという疑惑もあります。
自民党自体が、捜査当局の捜査に協力するとともに、自ら疑惑解明の責任を果たすよう求められているのです。麻生首相がやるべきは、まず閣僚である二階経済産業相や与党の政治家に違法献金の疑いについてこたえさせることです。自らにかかわる疑惑を解明してこそ、漆間氏の発言をめぐる疑念を打ち消すこともできます。
疑惑はあいまいにできぬ
もちろん、率先して疑惑にこたえなければならないのが、現に秘書が逮捕された小沢氏であり、民主党であるのは論をまちません。それが疑惑の解明はそっちのけで「検察批判」を繰り返し、その根拠のひとつに漆間氏の発言を挙げるようでは誠実に疑惑にこたえる姿勢ではありません。民主党は疑惑の解明を小沢氏任せにするのではなく、政党として自ら事実を究明し、疑惑を解明すべきです。
疑惑にかかわった政治家の責任をあいまいにすまさず、企業・団体献金の全面禁止など再発防止に踏み出すかどうか、いま各党の態度が問われています。