2009年3月9日(月)「しんぶん赤旗」

明日への視点

政治資金の抜け道と小沢氏

西松偽装献金

藤田 健


 準大手ゼネコン(総合建設会社)の西松建設からの「偽装献金」が政界に衝撃を与えています。判明しているだけでも五億円近くの資金が政界に流れ、野党第一党の小沢一郎・民主党代表の公設秘書が逮捕されたのですから当然です。

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 「偽装献金」といわれるのは、政治家個人への企業献金が禁じられているため、ほんとうは企業献金なのに、ダミーの「政治団体」を通じての献金であると装っているからです。ゼネコンが巨額の公共事業に群がり、そのもうけの一部を政治家への献金として還流するという構図は、小沢氏の後ろ盾だった金丸信・元自民党副総裁が失脚したゼネコン疑惑のころと変わりません。

 小沢氏二千四百万円、二階俊博経産相の政治グループ八百三十八万円、森喜朗元首相四百万円…。西松建設からの「偽装献金」リストも“いつかみた感じ”を覚えます。

 一九九三年のゼネコン疑惑のときも、清水建設の「ヤミ献金リスト」が報じられました。リストは、盆暮れの付け届けの額を「SA」=二千万円から「D」=二百万円までの五段階にわけて政治家をリストアップしたもの。「SA」に金丸氏、竹下登元首相、「A」に小沢氏など、リストには自民党やのちの「非自民」政権幹部の名前がずらりと並んでいました。

 世論は金権政治批判で沸騰し、企業・団体献金禁止の声が大きくなりました。ところが自民も「非自民」諸党も、「政治改革」と称して、問題を小選挙区制導入にすり替えていったのです。

 当時、日本共産党の不破哲三委員長は、このリストを示しながら、「ゼネコン疑惑の真相解明が怖いことでは、自民党も連立諸党も、共通の立場と利害に立っている」と批判。企業・団体献金について「政治家個人への(企業)献金だけをやめることでお茶を濁そう、こういう企業献金存続の方向に変わった」と「政治改革」の実態を告発しました(『時代の本流をつかむ』)。

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 この企業献金存続の中心にいたのが小沢氏でした。小沢氏は自著『日本改造計画』(九三年)で、政治資金の出入りを「全面公開」さえすれば「政治家にとっては…潔白証明書」となると指摘。企業・団体献金の禁止を「理論的にはおかしい」としつつ、「企業や団体による政治献金は政党に対してのみとし、政治家個人への献金は禁止してもいい」と譲歩案を提示。その代償として公費助成を主張したのです。

 小沢氏が新生党代表幹事として連立政権の中心にいた一九九四年には、公費助成として政党助成金制度を導入する一方、待ったなしだった企業・団体献金「禁止」は五年後に先送りしました。

 五年後、今度は自由党党首として、自民・公明との連立政権で、政治資金規正法「改正」を主導。政治家個人への企業・団体献金は禁止したものの、政党本体や政党支部への企業・団体献金という抜け道を残したのです。

 このように小沢氏は、政治資金問題を知り尽くす立場にありました。今回の事件で、「西松からの企業献金という認識だとすれば政党支部で計上すれば何の問題も起きなかった」とのべたことにもそれが現れています。

 それだけに、今回「偽装献金」のからくりを知らなかったというのは素直に受け取れません。二千四百万円もの献金をもらいながら、「お金の出所を聞くことは失礼だ」などというのも、なおさら不自然です。献金方法は小沢氏側と西松建設の協議の結果あみだされたとの報道もあります。

 今回の西松建設の「偽装献金」は、民主党議員だけでなく、自民党議員にも渡っています。それぞれの政党に真相解明の責任と自浄能力が問われています。

 これまで繰り返されてきた金権疑惑をみるにつけ、企業・団体献金を全面的に禁止しないかぎり、つねに抜け道や新手の献金方法が探し出されるのは明らかです。

 自民党政治に代わる「新しい政治」を展望したとき、企業・団体献金の禁止と政党助成金の廃止に踏み出すことは避けて通れない課題です。(政治部長)



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