2009年3月9日(月)「しんぶん赤旗」

主張

ODA「官民連携」

企業に直接支援は道理がない


 発展途上国で行う日本企業の事業がODA(政府開発援助)事業に該当すると政府が判断すれば、公的資金で企業の事業を「直接」支援する、新たな「官民連携」制度の具体化が進んでいます。

 昨年十一月以来、企業が政府に売り込んだ案件は約七十件で、外務省などが「官民連携」案件かどうかの検討を行っています。認められればODA予算が投入されます。「官民連携」制度は、ODAをめぐってこれまでも批判がつよい日本企業奉仕の役割をより露骨にするものです。アフリカ援助の強化を口実にして日本企業の支援を強めるのは許されません。

狙いはアフリカの資源

 外務省によれば企業が提案した約七十件のうち、半分以上はアフリカ関係といいます。道路や港の整備をはじめとした経済活動基盤整備や資源の発掘・開発事業が中心です。「アフリカ援助」といいますが、日本の大企業のもうけのための事業であることは明らかです。ODA予算を投入するのは道理が通りません。

 「官民連携」制度を主導したのは、財界・大企業です。昨年四月、日本経団連が出した「今後の国際協力のあり方について―戦略的視点の重視と官民連携の強化」は、「昨今は資源・エネルギー供給源としてのアフリカに注目が集まっている」とのべ、「官民あげて資源・エネルギー保有国との関係強化」「資源開発関連を含めたインフラ整備に注力すべき」だといっています。この提言にそって政府が導入したのが、ODAの「官民連携」制度です。

 日本経団連は二〇〇七年に出した「サブサハラ・アフリカの開発に関する意見」などでも、民間の事業をODAの無償資金協力や円借款で支援するよう政府にせまってきました。海外での営利事業を血税で実施するのが財界の狙いです。一般入札では外国企業がODA事業を受注することもありますが、日本企業への支援が前提の「官民連携」は、企業に確かな利益を保障することになります。

 外務省は「官民連携」の目標が「アフリカの成長の加速化」にあるといいます。「資源・エネルギーの日本への安定供給」が眼目なのは明らかです。

 アフリカで資源・エネルギーを発掘し、日本に供給することがアフリカ諸国の利益になるのだから、企業支援は当然という理屈です。しかし、アフリカの人々が飢餓・貧困にあえぎ、国連が人道援助を強めようと呼びかけているのに、国益や日本企業の利益を優先させるのは、あまりにも身勝手です。これでは、アフリカ援助を口実に、企業が大もうけするのを政府が手助けしているとの批判をうけても仕方がありません。

貧困救済を最優先に

 アフリカ援助が資源・エネルギー確保を優先していることは、外務省の〇八年版ODA白書でも明白です。〇七年度にODA実績を〇三年度の二倍にするとの政府の公約は達成されたものの、豊富な資源が眠っているタンザニアに対してアフリカ援助の42%強を援助した結果にすぎません。資源を持たない諸国への援助は相変わらず貧弱です。

 政府は援助強化をいうのなら、企業ではなくアフリカの人々の声をきき、貧困・飢餓救済に全力をあげることが重要です。


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