2009年3月7日(土)「しんぶん赤旗」
主張
「海賊対処」派兵新法
危険な武器使用へと一変する
自民・公明両党の「与党・海賊対策等に関するプロジェクト・チーム」は、政府が示した「海賊」派兵新法案と、防衛省が示したまず現行法で護衛艦二隻をソマリア沖に派遣する計画を了承しました。新法は十日に閣議決定をへて国会に提出される予定です。成立次第、十四日に先行的に派遣される護衛艦の活動にも適用されます。
新法は、他国船舶は保護できず「自己保存」のためにしか武器使用はできないとしてきた政府見解を一変させます。「海賊対策」を口実に海外派兵を強化する企ての中身は、あまりにも重大です。
接近する船の撃沈も
派兵新法は、現行法にもとづく海上警備行動が保護対象を「日本関係船舶」に限っているのを、すべての船舶に広げます。「公海」が対象で、活動区域に制限はありません。
重大なのは船舶の保護のために、武器使用を一気に拡大した新たな権限を自衛隊に与えていることです。犯人逮捕や自己・他人の防護などのために武器使用を認めた警察官職務執行法第七条の準用に加え、これまで認めてこなかった積極的な武器使用を認めています。「他の船舶の強取」「船舶内にある財物を強取」「船舶内にある者を略取」するなどの目的で「他の船舶に著しく接近」「つきまとい」「進行を妨げる」海賊船の行為に、武器を使用できるということです。
接近する海賊船に対して、「進行を停止させるために他に手段がない」からといって自衛艦の武器を使って発砲すれば、場合によれば沈没させることにもなります。自衛艦が装備する武器は戦争のための装備です。使えば海賊とはいえ、他国民の殺害、船の撃沈につながりかねません。インド海軍のフリゲート艦がタイ漁船の母船を間違って砲撃し撃沈させる事態も起きています。海賊行為は国際犯罪であり、もとより許すことはできません。だからといって、武器を使用して殺傷するのを認めるのは大きな誤りです。
新法の新たな武器使用規定は、正当防衛と違い、海賊行為に対処するという任務遂行のための武器使用です。これは憲法九条に照らしても重大問題です。
政府は、任務遂行のための武器使用は、「いわば自己保存のための自然権的権利というべきものの枠を越えた武器使用となり」「憲法九条の禁ずる武力行使に該当することがないとはいいきれない」(二〇〇一年十二月六日参院外交防衛委員会、津野修内閣法制局長官)とくりかえし答弁してきました。これまでの海外派兵法で基本的に「生命・身体の防護」に限ってきたのはその制約のためです。任務遂行のための武器使用を認めた新法は、政府見解に照らしても憲法九条に違反するのは明白です。
阻止のたたかいを
「海賊対処」を口実にして憲法が許していない武力行使に道を開く新法は、憲法違反の悪法です。とうてい許すことはできません。
政府・自民党は、海外で米軍とともにたたかうために、海外派兵恒久法の制定をめざしています。外国船舶を含めたすべての船舶の防護と任務遂行のための武器使用を認めた新法が、その基本になるのは目に見えています。
海外派兵強化の策謀を封じ込めるためにも、「海賊」派兵新法案の国会提出阻止が重要です。
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