2009年3月3日(火)「しんぶん赤旗」

主張

急増する待機児童

国・自治体は保育責任果たせ


 保育所への入所希望者が急増しています。「すぐにでも子どもを預けて働きたい」「働かないと生活できない」…。不況と雇用不安が深刻化し、子育て世代を経済的困難が襲っているためです。

緊急対策をただちに

 東京・世田谷区では申込者が募集定員の二倍近くにのぼるなど各地で定員を超える入所希望者が殺到しています。このままでは四月にどこにも入れない子どもたちが大量に生み出されてしまいます。これまでも二万人の待機児童が放置されてきたうえの今回の事態です。国と自治体の責任で緊急の対応策をただちにとるべきです。

 一つは、政府が緊急に保育需要を調査し、特別予算を確保して地方自治体の保育所建設促進の手だてをとることです。国が短期、中長期の保育所整備計画をもつことが必要です。もう一つは、地方自治体が四月にむけて、緊急の保育所定員の拡大、公共施設等を活用した臨時の保育所確保、無認可保育所利用者の負担軽減措置など可能な限りの対策をうつことです。

 こうした事態の深刻化は、自民党政府の保育政策がつくりだしてきたものです。保育に関する国庫負担を削減し、“待機児童ゼロ”といいつつ必要な保育所を建設してきませんでした。働く女性は増加する一方なのに、公立保育所は最高時(一九八三年)から二千五百カ所以上も減らされ、公立私立あわせても認可保育所数は八〇年代からほとんど増えていません。量だけでなく質の面でも、定員以上の詰め込みやパート保育士の導入、営利企業の参入を認めるなどの「規制緩和」で保育条件を悪化させました。公立保育所運営費の一般財源化は六割の市を保育予算削減に追い込んでいます。政府が子育てを「自己責任」とし「官から民へ」で保育に対する責任をまともに果たしてこなかったことが今の事態をもたらしたのです。

 そのうえ政府が待機児童問題などをたてにとり、保育制度そのものの大改悪に踏み出そうとしていることは重大です。先ごろ厚労省の審議会がまとめた「新しい保育の仕組み」では、市町村の保育に対する直接の実施義務をなくしてしまいます。営利企業などが保育に参入しやすくして、多様な保育事業者のなかから利用者が自分で保育所を探して申し込む「直接契約」を導入するものです。

 マスコミは「自由に選択できる」などと厚労省の言い分そのままに報道しています。しかし保育所の絶対数が不足しているうえに自治体の役割を大きく後退させ、“サービス拡大”は企業だのみでは、入所の保障も安心して子どもを預けられる保障もありません。財源も問題です。消費税増税が前提です。所得が低いほど負担が増す消費税増税は、子育て世代に二重の負担をしいるものです。

保育所建設の大運動を

 いま必要なのは制度改変ではありません。国、自治体の責任が明確な現行制度のもとで、安心して預けられる保育所を思い切って建設することです。三百十九億円の政党助成金など無駄を削り、国民の税金を使う優先順位を変えれば財源はあります。子どもと家族を社会が支えるのは世界では当たり前です。いまこそ切実な保育要求にこたえる保育所建設の大運動を、制度改悪を許さないたたかいと一体に、大きくひろげる時です。



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