2009年3月2日(月)「しんぶん赤旗」

明日への視点

二十歳の消費税

増税への執念の裏側には

渡辺 健


 誕生日はみんなで祝福したいものです。ただ、喜べない誕生もあります。四月一日、二十歳になる消費税です。

 記憶に鮮明に残ることがあります。

 「赤子は流れたが」(記者団)

 「元気そうじゃないか」(当時の中曽根康弘首相)

 一九八七年の国会の廊下でのこと。中曽根首相は八六年の衆参同時選挙で、「大型間接税はやらん。この顔がウソいう顔にみえますか」とウソをつき、選挙で自民党が圧勝するや、売上税という名前の大型間接税導入にまっしぐら。八七年のいっせい地方選挙で自民党が大敗北し、売上税導入断念に追い込まれます。

 「赤子は流れたが」というのは、売上税導入法案が廃案になったことをさします。「元気そうじゃないか」というのは、まだ、大型間接税の導入をあきらめたわけではないという意味です。

 その執念は、竹下内閣に引き継がれ、名前を消費税と変え、八八年十二月二十四日に消費税導入法案が可決・成立し、八九年四月一日から3%で実施されます。

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 どこからこんな執念が生まれてくるのでしょうか。背景に、自民党のスポンサーである財界の熱望があります。消費税国会のあった八八年の自民党への企業献金額は百二十五億円。前年から35%も増えていました。

 日本経団連の前身の経団連がまとめた『五十年史』(九九年発刊)に、いかに財界が大型間接税導入を政界に働きかけたか、その動機がなんだったのかが、リアルに記録されています。

 結論から先にいうと、「法人税の減税」のための財源として「大型間接税」の導入を求めたということです。

 そのことは、同「五十年史」の小見出しを順番に追うだけでわかります。

 ▼税制根本改革への提言―法人税の減税

 ▼減税財源と新型間接税導入問題

 ▼売上税の検討とその廃案

 ▼消費税の導入問題

 はじめに「法人税の減税」があったのです。

 消費税が導入された八九年度から〇八年度をみると、消費税による税収累計は二百一兆円。法人三税(法人税、法人住民税、法人事業税)の減収累計は百六十四兆円。法人税が減った穴埋めに消費税のほとんどが消えた計算です。消費税は「社会保障のため」という宣伝は通用しません。

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 いまも、消費税増税にもっとも熱心なのは、財界です。その動機に、社会保障の企業負担を減らすことが加わりました。

 消費税を10%以上に引き上げる議論の火付け役は、当時トヨタ自動車会長だった初代日本経団連会長の奥田碩氏です。〇三年一月発表の日本経団連の提言「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」(「奥田ビジョン」)は、消費税18%などの試算を提示。セットで法人税減税を求め、労使折半の社会保険料の企業負担をなくせと主張しています。

 キヤノン会長の御手洗冨士夫氏が会長を引き継いだ日本経団連。社会保障制度提言(〇九年二月十七日)は、具体的です。

 基礎年金の国庫負担割合を段階的に引き上げ、二〇二五年度をめどに全額税方式に移行します。そのために、消費税を一五年度までに10%に、二五年度をめどに17%に引き上げるという提言です。保険料負担は「最終的には不要」としていますが、負担がなくなるのは企業だけです。国民には消費税大増税という大負担が襲います。価格に転嫁できる大企業に消費税の痛みはありません。

 日本企業の税と社会保障の負担は、欧州諸国と比べまだ低い水準です。相次ぐ法人税減税の恩恵を受けてきた大企業が、ため込んだ剰余金(内部留保の一部)はトヨタとキヤノンだけで計十六兆円超。その前・現日本経団連会長企業が、目先の利益やさらなる負担軽減のために、「非正社員切り」に走り、消費税増税を迫る―。

 麻生自公政権は一一年度からの消費税増税をもくろみ、小沢一郎民主党代表も実施時期は別にして消費税増税が持論です。財界・大企業の身勝手な要求にばかり耳を傾けていては、政府も「戦後最悪」という経済危機を国民本位に打開する道は開けません。(経済部長)



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