2009年3月2日(月)「しんぶん赤旗」

主張

オバマとアフガン

政治解決に踏み出すときだ


 オバマ米政権が対アフガニスタン政策の見直しを進めています。軍事・外交の全体にわたる包括的なもので、三月末までには新たな戦略を決定するとされています。

 アフガンでの戦闘は日々犠牲者を出しながら、七年半近くにおよんでいます。問題は山積し、何のために戦っているのか米国にもはっきりしないのが実態です。米誌『ニューズウィーク』はアフガンが「オバマのベトナム」になるとの懸念を示しています。

 アフガン問題は軍事では解決しません。路線を明確に転換するか、がオバマ大統領に問われています。

軍事優先つづける限り

 オバマ大統領はブッシュ前政権の路線の転換を内外に訴えて就任しました。それから一カ月余。初の施政方針演説では、前政権の「対テロ戦争」路線からの脱却を鮮明にはしませんでした。むしろ、策定中の新戦略を「アルカイダを打ち負かし、過激主義と戦うもの」と位置づけ、「過激主義との戦い」との関連で米軍を「世界最強の軍隊」と述べたことは、軍事戦略の維持を示唆したとも見られます。

 米軍はアフガンとパキスタンで空からの攻撃や地上での掃討作戦を続け、テロにかかわりのない民間人に被害を出しています。二〇〇八年の民間人の犠牲者は〇一年の米軍侵攻後で最悪になったと国連機関が指摘しました。

 こうした被害から、アフガン国民の間では外国軍の存在が問題の原因だとする見方が強まり、外国軍への拒否感が強まっています。

 それにもかかわらず、オバマ政権成立後も米軍の作戦に変化は見られません。大統領は治安の悪化を理由に、アフガンに一万七千人の米軍増派を決めました。増派はさらに膨らむ可能性もあります。米国は北大西洋条約機構(NATO)諸国にも増派を求めています。

 オバマ大統領は、軍事一辺倒でなく外交も強めることを強調してきました。二月二十七日に米軍兵士を前に行った演説でも、アフガンを含む南アジア・中東地域について「地域問題を分離して対処することはでき」ず、「もっと賢明で維持可能な包括的アプローチが必要だ」と指摘しています。

 アフガン問題に「軍事解決」はなく、武装勢力タリバンとの交渉が不可欠だとの理解が世界的に広がっています。

 パキスタンでは、政府が国内のスワット渓谷を拠点にするタリバン勢力と和平協定を結びました。アフガンでの解決のモデルになるとの見方が出ています。しかし、オバマ政権のアフガン・パキスタン担当特別代表となったホルブルック氏は、「降伏」に等しいとしてパキスタン政府を非難したと伝えられ、政策見直しの行方は予断を許しません。

テロ根絶には法の裁きで

 〇一年の対アフガン軍事行動開始当時、日本共産党は米国などの軍事行動に強い懸念を表明しました。テロ問題には、「国際的な世論の包囲と国際法にもとづく制裁」によってテロ犯罪者に「法の裁き」をくわえることが、「テロ根絶のための大道だ」と主張しました。

 オバマ大統領が同時テロ犯・アルカイダの追及を目的にするのなら、問題の基本に立ち戻り、まずアフガンで和平を実現する政治解決に踏み出す必要があります。軍事作戦を中止し、米軍撤退に向けた方針を示すべきです。


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