2009年2月26日(木)「しんぶん赤旗」
主張
日米首脳会談
「重層的同盟」の危険な内実
日米首脳会談で麻生太郎首相とオバマ米大統領は、世界的な経済危機、アフガニスタンなど安全保障の問題、気候変動など地球的規模の課題に対処するとして、日米同盟を「いっそう強化」し、「より重層的な同盟関係」に拡大することで合意しました。
アメリカのイラク戦争の失敗で、紛争を軍事力でなく政治的・外交的に解決するという平和の流れはさらに大きくなっています。日米首脳がこの流れに逆らい、軍事同盟を基礎におく「同盟強化」をうたいあげたのは大問題です。
国民の痛みがひどくなる
両首脳は、在沖縄米海兵隊の移転を名目にしたグアム基地建設負担協定の実施を含めた在日米軍の再編・強化計画を、「着実に実施していく」と確認しあいました。
米軍再編は、ブッシュ前政権が一国覇権主義と先制攻撃戦略にもとづいて世界のどこにでもすばやく米軍を送り込むための軍事干渉のための戦争態勢です。アメリカの軍事戦略に日本を組み込むことにしかならないのは明らかです。
戦争を放棄した憲法九条をもつ日本が押し付けられるいわれは、まったくありません。唯々諾々としてアメリカのいいなりになる麻生首相の態度は、きわめて異常で世界の流れにも反したものです。
米軍再編はいまでも日本国民に耐えがたい苦痛を与えています。日米両政府が沖縄県民に押し付けようとしている新基地計画は、米軍機の騒音や墜落の危険で住民を耐え難い苦しみに陥れることは明白です。岩国基地(山口県)の再編も、厚木基地(神奈川県)から空母艦載機部隊を移転させるなどするため、航空機騒音が飛躍的に増えます。
米軍再編には三兆円もの巨費が必要です。日米両政府の合意どおり、二〇一四年までに完了することになれば年間数千億円もの血税が必要となります。国民生活予算をさらに圧迫するのは必至です。米軍再編の「着実な実施」を許すわけにはいきません。
会談で麻生首相がすすんで持ち出したといわれるアフガニスタン支援を「いっそう強化・加速」するとの方針も、見過ごしにはできません。アフガニスタンは米軍などの軍事作戦で民間人の被害が劇的に増えるなど、悲惨な状況にあります。戦争を一刻も早く終わらせることが必要です。
オバマ政権はアフガニスタンに米軍を増派することを決めています。軍事力強化によるアフガニスタン戦略に日本がいっそう深く協力することになれば、アフガニスタンの復興・安定にも逆行することにもなります。日本の支援は重大な結果を招きかねません。
日本国民の声に耳傾けよ
一国覇権主義が軍事でも経済でも行き詰まる中、オバマ政権は「変革」を掲げてスタートしました。日米首脳会談をみる限り、オバマ政権には、日米同盟を絶対化し、日本にさまざまな負担と犠牲を押し付ける、日米関係の基本線での変化はみられません。
オバマ大統領は大統領就任演説で、「米国は平和と尊厳の未来を求めるすべての国々、すべての男女と子どもの友人である」とのべました。それなら、日本国民の声にも耳を傾けるべきです。そうでなければオバマ政権に一定の「変化」を期待していた人々にも不信と怒りを広げることになります。
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