2009年2月24日(火)「しんぶん赤旗」

海兵隊グアム「移転」日米協定

基地永久化 沖縄は拒否

14人連名の「緊急声明」


 日米両政府が十七日、署名した在沖縄米海兵隊のグアム「移転」についての日米協定。「移転」と嘉手納基地以南の基地返還は名護市辺野古への新基地建設の「進展にかかっている」との「パッケージ」論を柱に、圧力をむきだしにしています。ワシントンでのオバマ政権との初の日米首脳会談と協定の国会提出が重なる二十四日を前に、沖縄の受け止めを追いました。(山本眞直)


 「私たちは日米両政府に対し(名護市での)新基地建設、東村での(米軍ヘリの離着陸施設)ヘリパッドの中止を求める」

 日米協定署名を翌日に控えた十六日、沖縄県の研究者や作家、ジャーナリストら十四人が連名で発表した「緊急声明」です。

 声明はその思いをこう述べています。「強制的に沖縄の人々から土地を取り上げて建設された米軍基地、米兵が中学生をレイプしても日本の裁判権も制限する日米の取り決めの存在、米軍の使う飛行場建設のためにサンゴ礁を破壊しても米政府は関知しないとする態度などを、沖縄の人々は目の当たりにしてきた」

 市民団体もいっせいに反発しました。

 「日米協定は沖縄に米軍基地を固定化させるためのものであり、とうてい受け入れられるものではありません」というのは、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さんです。「ヒラリー・クリントンは米軍再編の実施のダメ押しに来日した。だから中曽根外相との会談では沖縄のことはまったくカヤの外においている。グアムに海兵隊とその家族を大量に移転するといいながら、沖縄に新基地をつくるという矛盾だらけです。国会ではこうした問題点を明らかにする論議をすべきです」

米国から状況視察団

 一方、アメリカから一つの視察団が来沖しました。米連邦議会の下院軍事委員会(アイク・スケルトン委員長)の議員十人で、グアム移転計画の状況視察が目的です。二十日、二十一日の二日間滞在しましたが、視察日程などの詳細は公表されませんでした。

 「『協定』は矛盾のデパートだよ。だからこそアメリカは下院視察団を送ってきたのさ。まるで五十数年前の下院軍事委員会調査団とそのプライス勧告を思い出す」

 こう指摘するのは名護市辺野古への新基地建設に反対する「ヘリ基地建設反対協議会」の大西照雄代表委員。

 プライス勧告―。米軍占領下の一九五六年六月九日、琉球列島米国民政副長官が発表した軍用地問題に関する報告書です。プライス勧告はこう決め付けていました。「軍事的必要性が断固として優先する」「新接収は最小限にとどめる」

 大西さんは言います。

 「今回の協定も日米軍事同盟、抑止力の強化を最優先にかかげ、県民負担軽減は文字だけ。実態は米軍機の爆音被害の激増、ヘリや小型機の墜落、なにより辺野古や高江への新基地建設の押し付け。こんな協定を県民は絶対に許しませんよ」

納得できない日米合意

 琉球新報(二十二日付)は「パッケージ」論に県内市町村の多数の首長が反対しているとのアンケート結果を報じました。

 同紙には「基地固定化が半永久的となり許容できない」(大浜長照石垣市長)、「県民の声を無視し日米合意は納得できない」(古堅国雄与那原町長)などのコメントも紹介されています。

 高里さんはいいます。「協定の柱であるいわゆるパッケージ論には沖縄の国会議員も与野党の区別なく反対の声が出され、市町村長の多くが反対を表明しています。私は今月末からアメリカでの軍事基地撤去をテーマにし国際会議に参加しますが、日米協定のごまかしを告発してきたい」

 麻生首相は三月七日にも初の沖縄訪問を予定しています。

 大西さんもこう力をこめました。「日米両政府は協議をくりかえし、日本政府は何度も閣議決定して新基地建設を押し付けてきたが、県民世論の圧倒的な反対を前にクイ一本打てずにきている。これを突破するために協定をもちだしてきた。しかし沖縄の歴史が教えるのは、動かすのはワシントンでも東京でもない、ここ沖縄であるということ。プライス勧告とのたたかいが祖国復帰闘争の導火線となったように新基地建設協定も県民ぐるみの反撃にあうだろう」



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