2009年2月22日(日)「しんぶん赤旗」

主張

企業のスポーツ撤退

選手救済が待ったなしの課題


 企業のスポーツ界からの撤退が相次ぎ、トップクラスのスポーツを含め、深刻な影響をおよぼしています。

 全日本選手権を制したばかりのアイスホッケーの西武が今シーズン限りで廃部になります。社会人野球の強豪三菱ふそうと東芝、卓球の日産、女子サッカー「なでしこリーグ」の田崎真珠、アメリカンフットボールのオンワードホールディングスなど、いずれもトップ水準にある企業チームも廃部または活動停止を決めました。

「コスト削減」が理由

 自動車メーカーではF1のホンダ、自動車レースのスズキと富士重工、ダカールラリーの三菱自動車が撤退しました。賞金で成り立つゴルフやテニスなどのトーナメントから手を引く企業も続出し、選手とプロ契約してきたスポンサー企業も更新を手控えています。

 廃部や撤退の理由は、いまの金融危機による業績悪化に対応した「コスト削減」だといいます。見過ごせないのが、雇用危機をつくりだしている大企業の「派遣切り」などとそのやり口が変わらないことです。事前通告はなく、選手もコーチも監督も、その家族も“寝耳に水”で、いきなり寒空に投げ出されるありさまです。

 選手やファンは、チームの存続を願って署名活動に取り組み、大切な練習時間も割いて新しいスポンサー探しに飛び回るなど、精いっぱいの努力を続けています。なかなか希望が見えず苦戦を強いられる状況です。とくに一年後に冬季オリンピックを控える選手の不安と焦りはつのるばかりです。

 チームや選手を企業の広告塔として使えるだけ使って、都合が悪くなれば一方的に切り捨てる―。こんな横暴勝手は許される話ではありません。もともと選手やコーチは、「安定して継続的な活動」を大前提にして企業に所属しています。企業の都合だけで契約や雇用をほごにするのでは、競技力を支える基盤は崩れてしまいます。

 実際、アイスホッケーの日本リーグがチームの統廃合で休止しています。いまの事態がさらに悪化すれば企業チームが大半を占める競技ではトップリーグの存続自体が問題になりかねません。選手の養成と強化、ナショナルチームの編成、オリンピックへの出場など、競技力の向上に欠かせない機能が衰退することになるでしょう。

 スポーツを支援する社会的な役割にたいする日本企業の意識の希薄さ、無責任さを感じます。競技団体が主導性を大いに発揮して、企業の乱暴なやり方に歯止めをかけ、選手やコーチの救済措置を講じることが求められています。

企業チームの支援制度を

 企業の企業チームにたいする社会的責任と同時に、企業チームに不測の事態が起きた場合に備え、選手やコーチの身分を保護し安心して競技力の向上に専念できる支援制度を確立していくことが急がれます。

 文部科学省が所管するスポーツ振興基金を活用し、苦境に立つ選手やコーチにたいする必要な活動資金を援助できるように手をうつべきでしょう。政府の出資や企業からの義援金を増やし、社会的支援を強める必要があります。

 企業チームの選手やコーチが直面している危機的な状態を打開することは、スポーツの健全な発展をはかる待ったなしの課題です。


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