2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「裏金」疑惑

財界トップの責任免れない


 キヤノンが大分県などで発注した工事をめぐり同社の御手洗冨士夫会長ともじっこんのコンサルタント会社社長が、大手ゼネコン「鹿島」から巨額の「裏金」などを手に入れていた脱税事件の捜査が進んでいます。キヤノンも御手洗氏も事件とは無関係といいはっていますが、御手洗氏の存在抜きに起こりえた犯罪とはとてもいえないというのが常識的な見方です。

 御手洗氏は巨大企業キヤノンのトップであるとともに、日本の財界・大企業を束ねる日本経団連の会長です。財界トップとして、疑惑に答える責任があります。

日本経団連の倫理綱領

 日本経団連の倫理綱領ともいうべき「企業行動憲章」は、「企業は、公正な競争を通じて利潤を追求するという経済的主体」であるとして、「公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う」ことなどを定めています。「口利き」や「裏金」が法律に違反するか否かだけでなく、こうした企業倫理からも許されないのは明白です。

 しかも日本経団連の「憲章」は、「本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める」としています。御手洗氏は日本経団連会長として、繰り返し会員各社に「企業倫理徹底のお願い」をしてきました。御手洗氏がどこの誰よりも厳しく疑惑に向き合い、責任を明確にすべき立場にあることは明らかです。

 御手洗氏は、「裏金」が問題になった工事の発注側のトップというにとどまりません。裏金・脱税事件で逮捕されたコンサルタント会社社長と子どものころから付き合いがあり、現在も事実上、「私設秘書」の関係と報じられるほど濃密な交際を続けています。コンサルタント会社社長の関連企業がキヤノンの仕事に携わるようになったり、「鹿島」や「九電工」の受注を「口利き」し、「裏金」を受け取るようになったのも、御手洗氏との関係からとみられるのは当然です。

 御手洗氏は、コンサルタント会社社長は「古くからの友人」だが事件とは無関係だといいますが、知らぬ存ぜぬは通用しません。日本経団連の「憲章」の「経営トップ自らが問題解決にあたる」という規定を見るまでもなく、本来なら自ら率先して真相を究明し、責任を明確にすべきです。

 御手洗氏だけでなくキヤノン自体も、コンサルタント会社社長との間には「不正な取引が行われていないことを確認」したといいはりますが、本当に便宜を図ったことが一切なかったといえるのか。コンサルタント会社社長の関連企業が御手洗氏の自宅などを建設し、「口利き」などで「鹿島」からうけとった裏金がキヤノン株に投資されていただけでも、利害関係が背景と疑う根拠は十分あります。

税金を“食い物”の疑惑

 見過ごせないのは、御手洗氏やキヤノン、コンサルタント会社社長らの人脈は大分県知事や自民党の元県議会議長ともつながっていることです。その中で、大分県が出資する大分県土地開発公社の造成工事が工場建設を予定したキヤノンの「要請」で、「鹿島」に発注されるということも起きています。

 そこにも不正行為が介在したとすれば文字通り県民・国民の税金を食い物にする事態であり、疑惑は徹底して究明されるべきです。


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