2009年2月20日(金)「しんぶん赤旗」

主張

障害者自立支援法

応益負担やめ人権守る新法を


 障害者自立支援法の「見直し」を検討してきた自民・公明の与党プロジェクトチーム(与党PT)が先週、「基本方針」をまとめました。これを受けて政府は「改正」案を三月上旬にも閣議決定し、国会に提出する予定です。

 与党PTの方針は、現行法の枠内での部分的な手直しにすぎず、障害者の願いに応えるものになっていません。抜本的見直しを要求する声と運動を、大きく広げることが急務です。

不透明な与党PT方針

 与党PTの基本方針は利用者負担について、「能力に応じた負担」にするとし、定率一割負担を定めている「(自立支援)法第二九条等について見直す」とのべています。しかし、自立支援法の根本矛盾である「応益負担」制度を廃止するのかどうかは不透明です。医療、補装具の定率一割負担については一言もふれていません。

 障害者自立支援法で導入された定率の「応益負担」は、障害者と家族を苦しめています。政府・与党は障害者の批判に、「二度の軽減措置ですでに応能負担的になっている」と抗弁してきました。

 しかし、日本共産党国会議員団の実態調査でも、通所施設の場合で給食費と合わせて月一万円近くの過酷な負担が、低所得の障害者の生活を圧迫しているのです。

 与党PTの方針は、「特別対策や緊急措置によって改善した現行の負担水準の継続」とのべています。これでは障害者のこの厳しい負担を「継続」するものにしかなりません。障害者団体から、「現在の負担方式を『応能負担』と呼び方を変えるなどというだけで決着を付けてはならない」と疑念の声があがっているのは当然です。

 障害者・家族が強く求めているのは、人権侵害の「応益負担」制度そのものの廃止です。もともと障害を「自己責任」とする立場で、生きていくうえで最低限必要な支援まで「益」とみなし負担を課す「応益負担」制度は、憲法第二五条の生存権理念に反します。

 与党PTの方針は、利用料以外にもふれていますが、人材不足、障害程度区分、新体系への移行問題などどれをとっても実効性は定かではなく、深刻な矛盾を解決する方向性は不明瞭(めいりょう)です。しかも事業所経営を危機に陥れている報酬の日払い制は維持するとしているのです。「抜本的見直し」などといえるものでないのは明らかです。

 政府・与党は、自立支援法の抜本見直しに消極的な一方で、予定を早めて今国会に、障害者権利条約の批准案件を提出するとしています。条約の批准は当然ですが、権利保障と差別解消をうたった障害者権利条約に反する自立支援法を根本的に見直し、改廃することこそ政府の責務です。

政府・国会へむけて運動を

 与党が利用者負担を「応能負担にする」と明言せざるをえなくなったこと自体は、違憲訴訟をはじめ、障害者・家族の大きな運動の反映です。しかも、自立支援法の制度設計の眼目であった、「介護保険への障害者福祉の統合」も断念することを、事実上表明しています。現行法制度に固執する、大義も道理もなくなっています。

 障害者自立支援法の廃止と人間らしく生きる新たな法制度を求めていくことが急務です。日本共産党は、障害者の運動と連帯し、その実現に全力をあげます。



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