2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」
大虐殺の審理始まる
カンボジア・ポト派 被害者参加へ
【プノンペン=井上歩】一九七〇年代後半に二百万―三百万人といわれる大量虐殺をしたポル・ポト派政権の元幹部を裁くカンボジア特別法廷が十七日、プノンペン郊外で開廷しました。トゥールスレン収容所元所長のカン・ケ・イウ(通称ドッチ)被告(66)が第一回審問(初公判)に出廷しました。
同被告は、収容所内で約一万六千人の拷問・殺害に関与したとされ、人道に対する罪や戦争犯罪、拷問・殺人罪に問われています。
カンボジア人裁判官が冒頭、審理開始について「ポル・ポト派政権下での犯罪に最も責任を持つポル・ポト派指導者に判決を下す、独立・正義の法廷の進展だ」と表明。また「この法廷は被害者参加の仕組みをつくった最初の国際的審理」だと指摘しました。特別法廷では被害者が民事当事者として公判参加し、訴えや証人・証拠申請などをすることができます。公判ではトゥールスレン収容所から生還した被害者らからの新たな当事者申請について検討しました。
同法廷によると第一回審問には被害者や市民ら四百―五百人が傍聴。二百人以上の報道陣が取材しました。
幼児を含む虐殺の現場を目撃して証人に招かれているというコンポントム省の女性(63)は「その時の恐怖に苦しんできた。正義をもたらすことを長年待っていた」と思いをぶつけるように話しました。プノンペンの法科大学生ユーワンさん(21)はラジオで審理を知り傍聴に来ました。「歴史的に重要なことだと思う。なぜ彼らがこんなことをしたのか関心がある」と話しました。ドッチ被告への尋問など本格的な審理は、三月に行われる予定です。