2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」
タイ・カンボジア国境交渉
進む平和的解決
寺院遺跡周辺を共同監視
クメール寺院遺跡プレアビヒア周辺で、昨年十月に現地部隊が銃撃戦を行い緊張したカンボジアとタイの国境問題。平和解決を目指して国境画定のための共同国境委員会が協議を続けています。(プノンペン=井上歩)
タイ国営通信などによると、四日までバンコクで開かれた共同国境委員会は、領有権の主張が対立しているプレアビヒア周辺の四・六平方キロメートルの地域を共同で監視するチームの名称をめぐり意見があわず、新たな合意に至りませんでした。ただ、国境標識の検証作業は50%以上まで進んでいるといいます。四月第二週に次回の国境委員会を開くことにしています。
国境画定にあたりカンボジアは一九〇七年のフランス・シャム条約に基づいて作成された地図の使用を主張。タイは昨年の国境委員会で同地図の使用に原則的に同意したとされましたが、今回は地形に基づいた国境線を主張したと報じられています。
カンボジアは陸上国境画定ではタイが同地図の使用を認めた二〇〇〇年の覚書の存在も指摘しており、タイ側が不法に国土を占拠しているとの立場です。他方で、占拠されているとする地域での共同監視に同意するなど、柔軟さを示しています。
対話を重視
カンボジアのパイ・シパン閣僚会議官房報道官(次官・審議官級)は本紙の取材に「カンボジアは平和、安定、協力と発展の国境地帯を望んでいる。力の行使ではなく対話を重視している」と語りました。
「カンボジアは過去に十分に戦争を経験している。わが国の憲法は隣国との共存をうたい、ASEAN(東南アジア諸国連合)憲章や国連も同様だ。紛争は平和的に解決されなければならない」
タイ新政権
タイでは昨年十二月に民主党が連立を組み新政権を発足させました。同党は、国境問題でタカ派的主張をしてきた市民団体「民主主義市民連合」(PAD)と人事面などで関係を持っていますが、アピシット首相は昨年末の施政方針演説で「隣国との平和共存を推進する。平和的な交渉を通じた紛争の解決を強調する」と表明しました。
政府スポークスマンを務めるパニターン首相副秘書官長は、国境問題の対応について「原則は前政権と変わらない。よき隣人、協力推進、観光の増進が原則だ」と説明します。
一月末のタイ外相のカンボジア訪問では、カンボジアのフン・セン首相がASEANの幸福のため両国は関係を前進させる共同の義務と責任があると表明。二月末に開かれるASEAN首脳会議で国境問題を議題に提起せず、二国間の枠組みで協議するとし、タイ側に譲歩を示しました。タイ側は「積極的な発言」(パニターン氏)と歓迎。アピシット首相が「私の政府は、両国民によりよい安全保障と繁栄をもたらすことを約束する」と発言して応じました。タイ外相訪問で両国は、あらゆる問題を平和的手段で解決することも再確認しました。