2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」

ストップ 保育の市場化

厚労省案に現場の異論続出

議論の不十分さ明確に

部会委員も認める


 月内にも保育制度改変案の取りまとめを狙う厚生労働省は、十六日に保育事業者検討会を開き、昨年末以来、中断していた審議を再開しました。この日、改めて浮き彫りになった同省案(昨年十二月九日公表)の問題点とは―。(坂井希)


 保育制度改変を審議する厚労省の社会保障審議会少子化対策特別部会は、昨年十二月にすでに厚労省案を大筋了承しています。現場の声を聞くために設けられた保育事業者検討会で同意がおおむね得られれば、厚労省は今月中にも結論を取りまとめる段取りでした。

 ところがこの日の事業者検討会では、出席した団体から根本的な意見や疑問が続出しました。

義務あいまい

 日本保育協会、全国保育協議会、全国私立保育園連盟の三団体がそろって懸念を表明したのが、厚労省案では市町村の保育実施義務があいまいにされている点です。

 厚労省案は、市町村の保育実施義務(児童福祉法第二四条)をなくし、(1)保育の必要性・量(受給権)を認定する役割(2)利用者への保育費用の給付義務、保育提供体制の整備責任―を持たせるとしています。

 日保協は「公的責任が後退している」と批判。全保協も「自治体が保育制度の実施主体であることの明記が必要」と指摘しました。

現金給付狙う

 厚労省案の最大のポイントは、自治体の責任が、保育そのものを住民に提供すること(現物給付)から、保育サービスを市場で買うための補助金を利用者に配ること(現金給付)へと転換することです。

 新たな仕組みでは、利用者は、認定された受給権の範囲内で自分で保育所を探し、直接契約を結びます。市場での保育サービスの“売買”を利用者と事業者の「自己責任」に委ねるものです。

 日保協はこの点を突き、反対を表明。厚労省案に賛成している全私保連も「受給権という言葉は主に金銭を支給する際に使われ、現在問題となっている介護保険と混同される」と指摘しました。

質低下の懸念

 厚労省は、現行の都道府県による認可制度について「行政が公費の支出増大を嫌い、認可しないケースがある」と主張し、「客観的基準」を満たした事業者に参入を認めるとしています。

 全保協は「安易な事業参入は認められない。『認可』をとらずに『指定』ですむような取り扱いにすべきでない」と主張。日保協も「突然の撤退や保育の質の低下が懸念される」と反対しました。

 こうした議論を受け、少子化対策特別部会の委員でもある庄司洋子委員(立教大大学院教授)が、「受給権には『現金給付化』の意味が込められているのか。部会ではそういう観点でとらえていなかった」「指定と認可の関係はどうなのか、部会では詰めていない」と発言しました。厚労省案を「了承」した部会が、制度改変の根幹部分について、議論を十分に尽くしていないことが露呈しました。

 今後の審議日程は未定ですが、厚労省は年度内に結論をまとめる姿勢を崩していません。しかし、保育現場の強い懸念が払しょくされず、特別部会での議論の不十分さも判明したなか、このまま結論取りまとめを強行することは許されません。


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