2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」
中川財務相辞任
最低限の政治道徳さえ失った自民党政治の姿
政治部長 藤田 健
これが「百年に一度の経済危機」での対応なのか―。国際会議後の記者会見で失態をおかした中川昭一財務・金融相の辞任にいたる経過をみると、そう感じざるを得ません。
いまにも眠り込みそうな表情に、とっぴな発言、ろれつも回らない話しぶり。七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後の中川氏の記者会見映像は、みている側が恥ずかしくなるほど。英公共放送BBCのホームページでもビデオが流されるなど、国際社会での信用を失墜させた責任は重大です。
しかも、中川氏は当初は責任を回避し、辞任を決意してからも予算案の衆院通過を条件にするなど、居座りを策しました。こうした姿は、「戦後最悪の経済危機」(与謝野馨経済財政相)といいながら、国民生活の危機をなんとかしなければという責任感も打開策もない麻生内閣を象徴しています。
麻生太郎首相自ら、「百年に一度」と呼ぶ経済危機に、なぜこんな人物を財務・金融相に任命したのか。首相と中川氏は、「靖国」派の総本山・日本会議と連携する「国会議員懇談会」の元会長と会長代行という間柄。中川氏は昨年の自民党総裁選で麻生氏の推薦人にも名を連ねました。麻生首相も「お友達内閣」は避けるといいながら、「靖国」派の盟友を最重要閣僚―それも財務・金融分離以来初めての兼任で処遇したのです。
記者会見での失態が報じられても首相は続投を要請。予算案の衆院通過まで居座ろうとする中川氏の対応を認めるなど、最後まで「盟友」をかばう姿勢に終始しました。一割台の支持率が続く麻生内閣はいっそう窮地に追い込まれました。
国民の現状はどうか。「日本はそんなに大変じゃない」という首相の発言とは裏腹に、国内総生産(GDP)は12・7%減(年率換算)とサミット諸国のなかでも最悪の落ち込みです。雇用危機は、「年越し派遣村」村長を務めた湯浅誠さんが「万単位の人が路頭に迷う」と警告したほど。大企業の「下請け切り」で中小企業の状況も深刻です。自公政権が推し進めた「構造改革」路線で社会保障をはじめ国民生活を守る「防波堤」も破壊されました。
米ABCテレビは中川氏のG7会合での“居眠り姿”を報じながら、「自動車大手のトヨタや日産が何万人も解雇している状況は、目を覚ますのに十分な理由ではないか」と指摘しました。
国民の苦境をよそに、くらしや内需回復の方策さえ示さない麻生内閣。定額給付金問題や「郵政民営化」で首相が迷走発言を続けたと思ったら、中川氏の失態と辞任です。大企業中心とアメリカいいなりで破たんした自民党政治は、責任ある言動をおこなうという最低限の政治道徳さえ失っているようです。