2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」
主張
中川財務相辞任
首相の任命責任免れない
十四日開かれた七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後の記者会見で、しどろもどろで酩酊(めいてい)状態のような醜態を演じた中川昭一財務相が、辞任しました。
中川氏は二〇〇九年度予算案と関連法案の衆院通過後、辞表を提出するとしていましたが、辞意表明したあと答弁に立つなどというのは通用しません。結局、直ちに辞任すると追い詰められたのは当然です。
記者会見での中川氏の異常ぶりは、世界のメディアでも大きく報道されました。世界的な金融・経済危機への対処が問われている重大な会議の場で醜態を演じたこと自体、大臣としての資格が問われる問題です。
中川氏は風邪薬の服用などを理由に挙げますが、飲酒との関連も否定しません。アメリカのメディアが「トヨタや日産が解雇している時には、それだけでも目が覚めてしかるべきだ」と皮肉ったように、中川氏の醜態は国民の暮らしの実態への危機意識のなさ、無責任さの表れです。
飲酒の癖(へき)が指摘されてきた中川氏を財務相に起用し、問題行動が明らかになっても辞任を求めなかった麻生太郎首相の責任は重大です。
麻生首相自身、日本経済の現状について「他国に比べ傷が浅い」と主張するなど国民の暮らしへの認識が乏しく、定額給付金問題などで自らの発言をたびたび修正するなど、政治への無責任さも顕著です。
中川氏はもちろん首相がその責任を厳しく問われるのは当然です。
基地建設協定
国民の痛み大きくする
日米外相会談で中曽根弘文外相とクリントン国務長官は、在沖縄米海兵隊の移転を名目にしたグアム基地建設の負担の法的枠組みを定めた日米協定に署名しました。
グアム基地協定の署名は重大です。グアム基地建設を含む米軍再編は、世界とアジアの平和的とりくみを妨げ、日本国民の基地の痛みと負担を増やします。とうてい認めることはできません。
米軍再編は、ブッシュ前政権の先制攻撃戦略の象徴です。グアムや日本から世界のどこにでもすばやく米軍部隊を送り込み、中東であれアジアであれ、狙いをつけた国に軍事介入できる軍事態勢づくりです。戦争を放棄した憲法をもつ日本が支持・支援することは本来許されるはずのないものです。「日米同盟」を理由に、日米協定で日本の負担を義務化するなどとんでもない話です。
外国の基地建設費を負担する国は世界でも日本だけです。主権を事実上放棄し、アメリカいいなりを基本にしている日本でしかみられない世界の異常です。「沖縄県民の負担軽減」のためといって、戦争態勢づくりのための費用負担を国民に押し付けるやり方はそもそも通用しないものです。
見過ごせないのは日米協定が、米海兵隊のグアム移転は沖縄での米軍の新基地建設計画の「進展にかかっている」と明記し、新基地建設への圧力をむきだしにしていることです。
新基地は新たな戦争の拠点になるばかりか、騒音や墜落などの危険を県民に押し付けます。県民に新基地容認を押し付ける日米協定に反発が強まるのは当然です。現に米軍機騒音が激増するなど県民の痛みは大きくなるばかりです。日本共産党の赤嶺政賢議員の追及に浜田靖一防衛相が「負担軽減が実現していないとのご指摘があることは重く受け止めている」とのべる事態にもなっているほどです(六日衆院予算委員会)。
グアム建設費の負担は「沖縄の海兵隊がグアムに移ると、そのことに限定してお支払いする」(二〇〇八年四月十八日参院決算委員会、石破茂防衛相=当時)と約束してきたにもかかわらず、政府はアンダーセン空軍基地やアプラ海軍基地など沖縄海兵隊以外の米軍が使用する基地の建設費まで負担を広げています。内容も、国会と国民を欺いた手法も、重大です。
ブッシュ前政権の先制攻撃戦略はイラク戦争の失敗で明白です。軍事的覇権主義が破たんした以上、沖縄、岩国など在日米軍基地の再編・強化はやめるべきです。国際情勢は「戦争のない世界」をめざす動きが大勢です。いま日米関係に求められるのはアメリカいいなりの姿勢を根本からただすことです。支配と従属という旧来の日米関係を脱却し、対等・平等・友好の関係への転換が重要です。
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