2009年2月17日(火)「しんぶん赤旗」
クリントン国務長官、訪日
対日本 米軍再編での要求拡大
「聞く耳ある」というが…
条約として拘束
クリントン米国務長官は、就任後初の外遊の最初の訪問先として十六日夜、日本に到着しました。十七日午前に中曽根弘文外相と会談し、共同記者会見に臨みます。午後には浜田靖一防衛相、麻生太郎首相、小沢一郎民主党代表と相次いで会談、東大での学生と語る会にも出席します。同長官は訪日後、インドネシア、韓国、中国を歴訪します。
今回の歴訪に先立ち十三日にニューヨークでアジア政策について演説したクリントン長官は、「オバマ大統領と私は、衝動的でもイデオロギー的でもない外交政策を誓約している」と述べ、ブッシュ前政権との違いを強調。「パートナーの声に耳を傾ける用意がある」と繰り返しました。
ところが対日関係では、今までのところ、ブッシュ前政権期に強行された米軍再編をさらに推し進める、軍事優先の対応が突出しています。それは、今回の訪日で最初に着手する具体的課題が、沖縄駐留の米海兵隊の米領グアム「移転」に伴う日本の負担を条約として法的に拘束する協定の調印であることに、端的に示されています。
合意超える負担
この協定は、米領土内にある基地の建設、増強に対し、外国の政府が財政負担するという、極めて異様なものであるにとどまりません。当初の合意を超えて、米軍実戦部隊用の作戦運用施設の建設経費も分担するものに拡大されています。
同協定の調印が突出する要因は日本側にもあります。麻生首相はオバマ大統領との最初の電話会談でも「日米同盟の一層の強化」を表明。中国の台頭も視野に入れて展開される米国の東アジア戦略で日本の比重が軽くなるとの“危機感”から、グアム協定調印やソマリア沖派兵などの「実績」を積み重ね、軍事同盟国・日本の存在意義を際立たせ、アメリカいいなりでさらに突っ走ろうとしています。
在日米軍再編に関して、米空軍嘉手納基地で米軍機による騒音発生件数が増え、「地元の負担軽減」という日米合意に反する事態が起こっています。日本共産党の赤嶺政賢議員が六日の衆院予算委でこれを追及したのに対して中曽根外相は、「沖縄の負担の軽減についても(クリントン長官に)実情は話したい」と答弁しました。
政府は、この問題を含め、在日米軍基地の強化を直ちにやめることを提起すべきです。クリントン氏も「聞く耳がある」というのなら、こうした現実から出発することが、「衝動的でもイデオロギー的でもない」外交の第一歩となるでしょう。(坂口明)
■関連キーワード