2009年2月13日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「かんぽの宿」

疑惑はいっそう深まるばかり


 郵政公社を民営化した日本郵政会社が、所有する宿泊保養施設「かんぽの宿」をオリックス不動産に一括売却した問題で、鳩山邦夫総務相の「見直し」要求をきっかけに、議論がつづいています。

 常識はずれに安い売却価格にせよ、オリックスに決まった経過にせよ、疑惑は山積です。疑惑を徹底究明し、オリックスへの売却を白紙に戻すだけでなく、国民の財産を安値で売り払うやり方そのものの再検討が不可欠です。

2千4百億円が百億円に

 「かんぽの宿」は、郵政公社が簡易保険の掛け金を使って建設した保養施設です。日本郵政は、各地の「かんぽの宿」と「かんぽの郷」計六十九施設と、JRさいたま新都心駅前の宿泊施設「ラフレさいたま」、首都圏の社宅など計七十九施設を一括して百九億円でオリックスへの売却を決めました。

 これらの施設の建設費用は、土地代と建設費を合わせた約二千四百億円といわれます。「ラフレさいたま」だけでも、約二百八十億円が投じられたといいます。百九億円という売却価格は常識はずれの超安値というほかありません。郵便局が勧めるからと簡易保険に加入し、保険料を払い続けてきた国民から見て、とうてい納得できる価格ではありません。

 日本郵政は「かんぽの宿」は赤字だから、資産価値どおりには売れないといいます。しかし、保険加入者に割安の価格で提供してきた「かんぽの宿」が、一般のホテルや旅館と同じようにもうけを追求しないのは当たり前です。わずか一万円で売却された「かんぽの宿」が、半年後には六千万円で転売されていた事実も明らかになりました。価格はもちろん、売却方針そのものに抜本的なメスを入れることが不可欠です。

 「かんぽの宿」の売却先がオリックスに決まった経過は、日本郵政の説明自体、二転三転しているうえ、不可解の一語につきます。日本郵政の売却先の募集はホームページでの掲示だけで、それも最初に応募した二十七社が二十二社、七社、三社、二社と減っていき、最後には突然の売却条件変更で残った一社も辞退して、オリックスだけが残ったというのです。これでは公開の競争入札による決定とは、とてもいえません。

 オリックスの宮内義彦会長はもともと政府が進めた「規制改革」路線の旗振り役で、「かんぽの宿」売却の背景となった郵政民営化についても、たびたび発言してきました。宮内氏が“規制緩和の政商”といわれたのは有名です。本来疑惑を抱かれないためには、買収に名乗りを上げないのが当然です。鳩山氏にいわれるまでもなく、国民が「出来レース」と受け取るのは当然で、とても国民の理解を得られる話ではありません。

民営化の根本から見直せ

 売却問題の根本をたどれば、郵政公社を廃止し、郵便、郵貯、簡保などに分割し、国民の共有財産の投げ売りを続けてきた、「民営化」路線そのものの矛盾につきあたります。日本郵政は「かんぽの宿」をそのまま残せば経営が圧迫されるといいますが、もともと民営化・分割すれば経営が不安定になるのはわかっていたことです。

 郵便も郵貯も簡保も国民の財産です。反対を押し切り民営化したうえ“政商”に切り売りされるなどというのは断じて許されません。



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