2009年2月12日(木)「しんぶん赤旗」
主張
3・1ビキニデー
核兵器廃絶への確かな前進を
一九五四年三月一日の太平洋ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験被災から、まもなく五十五年です。その水爆の威力は広島型原爆の千倍といわれ、周辺住民ばかりか第五福竜丸など日本漁船にも甚大な被害を与えました。乗組員の久保山愛吉さんがなくなるなど、広島、長崎に次ぐ核の犠牲は、国民的な原水爆禁止運動を生み出す契機となりました。
廃絶の声が広がるなかで
ことしの3・1ビキニデーは、核兵器廃絶を求める声の大きな広がりをうけ、今度こそ実現への確かな前進を、の決意が高まるもとで迎えます。
日本の原水爆禁止運動は、被爆者とともに、核戦争阻止・核兵器廃絶を日本国民の世論とし、世界に広げてきました。
核破局の危機に直面した一九八〇年代をはじめ、近年は米ブッシュ前政権が核兵器使用と先制攻撃の政策を進め核拡散阻止を口実にイラク戦争を強行するもとで、反核平和の世論・運動の国際的発展に貢献してきました。世界の反核平和運動や非同盟諸国、新アジェンダ連合諸国とも連帯し、核兵器使用をはばみ、核兵器の脅威を振りかざす力の政策を破綻(はたん)に追い込んできたのです。
そしていま、人類の生存、平和と安全のために核兵器のない世界へと進むべきだという声が、かつてない広がりを見せています。核保有国や同盟国の元高官、さらに政府の中枢からも、提言や発言があいついでいます。
この中には、核兵器の拡散だけを問題にする主張もあります。しかし、その解決のためにも核保有国自身が核兵器の廃絶に向け行動すべきことを、オバマ米大統領を含め共通して認めるような状況になっているのです。先月には、イギリスの退役した陸軍元帥らが共同声明を発表し、首相や外相が「核兵器のない世界」を「公の課題」にかかげたがその一方で核戦力の近代化を進めるのでは指導性を発揮できない、核抑止力は必要ないと指摘し、注目されました。
このような流れを、核兵器廃絶の実現へ結実させる決定的な力は、諸国民の世論と運動です。
昨年の原水爆禁止世界大会は、二〇一〇年五月の核不拡散条約再検討会議にむけて、核兵器禁止・廃絶条約の交渉開始を求める新しい国際署名を提起しました。
核破局の危険を阻止し、核兵器廃絶の世論を世界に広げてきたこれまでのさまざまな署名運動の到達をひきつぎ“今度は本当に核廃絶を実現させる署名、核兵器をゼロにする署名だ”と、運動が広がっています。
日本政府の逆流を許さない
このような世界の流れに逆行しつづけるのが、被爆国日本の政府です。最近、佐藤栄作元首相(故人)がアメリカに、中国との武力衝突の際には即時核報復をと要求していたことが明らかになりましたが、麻生内閣のコメントは「非核三原則に反しない」というものでした。核兵器廃絶の条件が生まれているのに、その推進どころか、あくまでも「核の傘」に固執し、核兵器先制使用さえ当然とする姿勢をとり続けているのです。
日本の運動の役割はますます重要です。五十五年を迎える3・1ビキニデーを、文字通り核兵器のない世界につながる新しい出発の日としようではありませんか。
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