2009年2月8日(日)「しんぶん赤旗」

主張

泡瀬干潟埋め立て

判決無視の暴挙は許されない


 沖縄市の沖に広がる、沖縄に残る最大規模の干潟である泡瀬(あわせ)干潟の埋め立て事業で、政府は、すでに周囲を護岸で囲ってあった干潟に、一月十五日から土砂の投入を始めました。

 埋め立て事業については、那覇地裁が昨年十一月に「経済的合理性を欠く」として、県民の要求どおり、沖縄県知事と沖縄市長に公金支出の差し止めを命じる判決をだしています。判決は未確定などといって土砂投入を始めた政府の行為は、法治国家でとうてい許されるものではありません。県民の多くが抗議し、埋め立て中止の声をあげているのは当然です。

自然保全の義務放棄

 泡瀬干潟の埋め立て事業とは、沖縄市沖に広がる二百九十ヘクタールもの広大な泡瀬干潟のうち、約百八十七ヘクタールを埋め立てて人工島をつくり、大型ホテルや観光商業施設などが立ち並ぶ一大リゾート地帯をつくるというものです。土砂投入を始めた六十九ヘクタールを含む第一区域約九十六ヘクタールの埋め立て工事を二〇一二年度に完了させる計画です。

 しかしこの人工島に企業が進出するというのは、誘致計画が白紙状態であることからも考えられません。政府が東側地域に整備中の税金のかからない特別自由貿易地域(約八十九ヘクタール)で、企業誘致計画がいまもって目標の6・9%にすぎないことは、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の国会質問であきらかになっています。那覇地裁が埋め立て事業を「経済的合理性を欠く」としたのは当然です。

 泡瀬干潟を特別自由貿易地域整備のさいの「浚渫(しゅんせつ)土砂を活用できる埋立地」(内閣府沖縄総合事務所)とするというのがそもそもの計画です。こんなむだな開発のために、沖縄の貴重な自然を破壊するなど言語道断です。

 泡瀬干潟の底質は泥、砂、サンゴ礫(れき)などで、海草藻場やサンゴ礁もあります。らせん状に回転しながら砂地にもぐるミナミコメツキガニなどの甲殻類からリュウキュウアオガイなどの貝類をはじめ、ムツゴロウに似た愛きょうのあるトカゲハゼや珍しい海藻のクビレミドロなど南西諸島特有の生態系が広がっています。満潮時にはジュゴンやアオウミガメも海草を食べにきており、絶滅危惧(きぐ)種も数多く生息しています。これらの生物を「生き埋め」にしてはなりません。また干潟にムナグロなどの野鳥が数多く飛来しています。泡瀬干潟の生態系は人間社会が守るべき、かけがえのない宝です。

 日本も批准したラムサール条約は水鳥を守るために湿地を保全するよう求めています。生物多様性条約は多様な生物をその生息環境とともに保全することを目的にしています。日本政府が泡瀬干潟を埋め立てることは、これらの条約の趣旨にも反します。泡瀬干潟の埋め立てはどこからみても許されません。政府は強権的態度を改めるべきです。

いまならまだ間に合う

 泡瀬干潟を土砂で埋め立て、リゾート地帯にしてしまえば元の干潟に戻すことはできません。沖縄県と沖縄市は那覇地裁の判決を不服として控訴しましたが、最高裁が地裁判決を支持したときに、原状回復はできないという状況にさせるわけにはいきません。

 いまならまだ間に合います。政府は土砂の投入をやめ、泡瀬干潟の保全について再考すべきです。



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