2009年2月3日(火)「しんぶん赤旗」

ベトナム政府が貧困削減計画

山岳部61県 林業・農業を支援

世界不況のなか


 ベトナム政府はこのほど、主に少数民族が暮らす山岳地帯を対象にした新しい貧困削減プログラムを決定しました。金融・経済危機の影響をうけるなか、貧困削減がとくに遅れる山岳部の底上げを図ろうとしています。(ハノイ=井上歩)


 労働・傷病兵・社会省によると、ベトナムの貧困率(世界銀行の貧困基準)は一九九四年の約58%から二〇〇八年には約13%にまで減少。一九九八年から国家事業とした貧困削減は、生産支援、職業訓練などに取り組み、大きな成果を上げてきました。

 他方で二〇〇八年は原油・食料高騰と金融危機、世界景気後退の影響を受け、貧困率11―12%という目標を達成できませんでした。同省社会援助局のゴー・チュオン・ティ副局長によると、「十年間の貧困削減努力が徐々に効果を出している」ため、直近の貧困率は12―13%を維持しましたが、「再貧困(再び貧困水準に落ち込む世帯)が増加し、貧困削減にブレーキがかかった」といいます。

 政府がこのほど打ち出した新しいプログラムは、貧困率が50%を超える全国六十一の県(日本の郡に相当)を集中的に支援する内容。これらの県は森林の多い山岳部にあり、インフラ整備は大きく遅れています。人口二百四十万人の90%が少数民族で、就学率は低く、生産技術も普及していません。

 政府は貧困家庭が林業をはじめる場合、苗木、資金を支援。また生産林が成長するまでの期間の食料などを援助します。保護林の管理をする住民には管理費も支払います。開墾地には一ヘクタールあたり一千万ドン(約五万二千円)を支給するなど、農業も強く支援します。

 ティ副局長は「貧しい人を主体に、いかに人々が森から仕事を得て森と暮らし、森を守るかを課題とした」と説明します。「これまでの政策はインフラ整備だった。しかし道路脇に暮らしながら貧しいままの人がいるとわかった。彼らの問題は生産であり、今回は生産条件を支援することで生活向上を図る」

 プログラムの総額はまだ未定。自立支援型を徹底したためで、国は予算を決めず、県の行政当局が実行主体としてプログラムを作成、予算を申請します。国は承認されたプログラムについて全額を支給します。


 貧困率 相対的貧困率と絶対的貧困率があり、日本、アメリカなどが加わる経済協力開発機構(OECD)では、相対的貧困率を採用。子どもを含めた世帯人数で調整した可処分所得の額が、平均的な水準の半分を下回っている人口の比率をいいます。一方、世界銀行は絶対的貧困率を採り、一九九三年の購買力平均換算で一日あたりの生活費が一・二五米ドル以下で暮らす人口の割合をいいます。


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