2009年2月2日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

思い結んだ共同作業場

若者 こだわりの靴を作りたい

作り手 靴作りの技術を伝えたい


 こだわりの靴作りがしたい―という若者の願いと、物づくりの技術を伝えたい―という作り手の思いが「靴・はきもの共同作業場」に結実しました。製靴業を地場産業とする東京都台東区、浅草民主商工会のとりくみです。活気ある作業場を訪れました。(遠藤寿人)


東京・台東 浅草民商

 民商会館の3階は小さなブースに仕切られミシンや圧着機が並びます。昼、会社勤めの人も含め、若い男女6人が入居。家賃月23000円と民商会費月5700円が必要です。

 中島寿子さん(28)は入居して一年。自分の名前にちなんだ「JUCO.(ジュコ)」ブランドを立ち上げています。

 作業場には色鮮やかな革や布でギャザーを寄せ、リボンをコラージュしたブーツやサンダルが。

 定番はスリッパに似た「スリッポン」です。かかとがなく、皮底で外で履くことができます。なかでも、つま先にムートン(羊の毛)をあしらった「プードル」がお気に入り。

 母親には「変な靴。雨降ったらどうするの?」と言われましたが、本人は一向に気にしていません。「その靴を見た人がかわいい、履きたいと思うことが大事。機能性ばかりを気にしすぎると、飾りも何もない、つまらない靴になってしまう。もちろん、履き心地も大切に作っています」と。

 これまで個展を年に2回のペースで開いており、バイヤー(買い付け人)などから注文が舞い込んでいます。

 中島さんは奈良県出身、神奈川県で育ちました。美術大学で室内建築を学ぶ傍ら、一流ファッションブランドにあこがれてきました。

 卒業制作で、「変身する靴」を作ることになり、個人工房で靴作りを学びました。

やりがいある「迷い」はない

 吉見鉄平さん(31)は、大学商学部で貿易を専攻しました。英国に語学留学、革製品が好きで、ロンドンの靴学校に通いました。驚いたことに生徒の半数が「日本人」でした。靴作りにはまり、浅草の靴メーカーに六年間勤め独立しました。

 吉見さんの仕事は靴のパタンナーです。木型にあわせ型紙を作製します。服飾メーカーからの注文が大半です。「手元で形が変わっていくのが面白い。収入が不安定なこともあり親は反対していますが、靴職人になりたいと思ってやってきました。やりがいがあります」と迷いはありません。

個人の好みや足に合わせる

 「職人の世界に大学を出て飛び込んでくるんだからねぇ」と感心するのは、民商の小原直事務局長。作業所を「若者育成の拠点にしたい」と意気込んでいます。

 製靴業は、安価な海外製品の輸入などに押され苦戦を強いられています。東都製靴工業協同組合の加盟社は現在150社。80年代ピーク時370社の半分以下です。昨年1年間で10社倒産する厳しい状況です。

 作業場で中島さんたちを指導・援助する佐藤正男さん(63)。靴職人として40年以上の大先輩です。「メーカーは即戦力が欲しい。でも、靴が作れるようになるまでに5年はかかる。これでは、靴学校を卒業しても若者が力を磨く場がない」との思いから作業場を発案しました。

 佐藤さんはいいます。「これまでは、大量生産の靴に足を合わせてきた時代。もうけ主義の楽な靴作りだった。これからは、個人の好みや足に合わせた靴作りが求められている。その先端をいっているのが若者たちだ」

 「靴で自分を表現する」ことをめざし、肩書は「靴作家」の中島さん。外注先についての知識や、技術が伴わないこともしょっちゅうです。そんな時、作業場での情報交換が役立ちます。

 「きついこともあるけど、すべてをメーカー任せにした靴では決してできない手仕事の残ったカッコいい靴を作りたい」


お悩みHunter

理科の成績を伸ばす勉強法は

  高校1年の女子です。将来は、環境保護の仕事がしたいと思っています。大学も理学部に進学したいと思って、それなりに勉強をしてきました。でも、最近スランプです。塾にも通っているのに、理科の成績がなかなか伸びません。どんな勉強をしたらいいですか。(16歳・女子)

広い視野でとらえ直してみて

  将来就きたい仕事がはっきりあっていいですねー。しかも、その実現のためにふさわしい学部に進学しようとしているのも素晴らしいと思います。偏差値で何となく大学や学部を選ぶ高校生が多い中で、すごい“正攻法”だと思います。また、今、大問題の環境保護の仕事に就きたいなんて、何だかうれしくなりますね。

 ところが、理学部の進学に不可欠な理科の成績が伸びないというのですから、確かにこれは心配ですね。塾の成果も上がらないとのこと。これでは落ち込みますよね。

 しかし、あなたはまだ高1です。これから高2、高3と進むにしたがって、他の教科の教養も身につき、視野もぐんと広がることでしょう。また、一口に理科といっても、生物、物理、化学、地学など幅広い領域に及んでいます。あなたのキャリアイメージの実現につなげるために最もふさわしい理科の分野とその勉強法が必ず見つかるはずです。

 さらに、環境問題に関連する本を読んだりするなかで、単なる受験用の暗記ではない理科への興味・関心が高まってくると思います。即効性はないかもしれませんが、いつか必ず成績という結果にもつながってくることでしょう。

 大丈夫ですよ。今の自分を信じて、少し広い視野から理科をとらえ直してみてください。先はまだまだ長いのですから。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


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