2009年1月31日(土)「しんぶん赤旗」

主張

ボリビア新憲法承認

新自由主義拒否と社会的連帯


 南米ボリビアで国民投票が実施され、新憲法案が賛成多数で承認されました。新憲法は先住民の権利の保障、貧困の一掃、民主主義、自主・独立と平和などを理念とし、平等で多元的な社会の建設をうたっています。憲法に新自由主義を「過去のものにする」と明記したことは、弱肉強食の新自由主義を拒否した新たな経済社会の探求として重要な意義をもっています。

住民の願いが動かした

 新憲法の前文は、植民地支配以来のボリビア人民の社会闘争の経験を想起し「水戦争や十月の(ガス)戦争」に言及しています。

 ボリビアでは一九八〇年代、政府顧問についた米国の経済学者や国際通貨基金(IMF)・世界銀行などが新自由主義政策を導入しました。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる緊縮財政、公営事業の民営化、市場の対外開放などの「ショック療法」によって、圧倒的多数を占める貧しい国民の生活は破壊に追いやられました。

 その最たるものが水道事業の民営化でした。水道代が一挙に二倍にも跳ね上がり、平均的な収入の三割近くを占めるようになりました。二〇〇〇年には米系多国籍企業が水道を支配したコチャバンバ市で、〇五年には仏系多国籍企業が支配したラパス市で、水を取り戻そうと地元住民がデモやストに立ち上がり、最後には公営化を勝ち取りました。

 一方、〇三年には英系石油メジャーなどがボリビアの重要資源である天然ガスを米国向けに不当な安値で輸出しようとしました。住民には、十六―十七世紀にボリビア・ポトシ銀山から大量の銀をヨーロッパに運び出した植民地収奪の再現と映り、資源の国有化をめざす運動が高まりました。

 政府の弾圧に抗して行われた先住民や労組など広範な住民のたたかいを通じて、〇五年には指導者のエボ・モラレス氏が先住民として初の大統領に当選しました。

 ボリビア国民の55%が先住民、白人は15%、混血30%です。南米でも最貧国に属し、先住民を中心に六割近い国民が貧困にあえいでいます。一方で、白人は肥よくでガス田も抱える東部低地を中心に、大土地所有を基礎にした富を築いています。

 モラレス大統領は貧困解消と先住民の権利拡大に力を入れてきました。新憲法はその政策を反映し、同時に行われた投票で、施行後は土地所有に五千ヘクタールの上限を設定することも決まりました。

 特権を死守しようとする富裕層は、東部四県の「一方的独立」をめざすなど、モラレス政権に敵対してきました。新憲法承認の帰すうは対立の焦点となり、富裕層の不穏な動きが伝えられてきました。

 新憲法は地方自治の強化で富裕層に配慮を示し、根強い対立に解決を見いだそうとしています。

米国の干渉を排して

 新憲法は政治的、経済的に主権を確保する立場を強調しています。外国軍事基地の設置の禁止、侵略戦争の拒否など平和の対外政策を掲げています。その背景には、米国がコカ栽培の一掃を掲げて、ボリビアの内政にくりかえし干渉してきたことがあります。

 新憲法は、社会的連帯に立つ経済の構築をめざす点でも、米国の干渉を排除する点でも、中南米で大きく前進してきた進歩的変革の流れを定着させるものです。


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