2009年1月30日(金)「しんぶん赤旗」
横浜市立園民営化訴訟
「保育原理に背く判決」
東京高裁 原告側が逆転敗訴
横浜市立保育園の民営化をめぐり、保護者が同市を相手取り、民営化の取り消しと損害賠償を求めた裁判で東京高裁(渡辺等裁判長)は二十九日、「早急な民営化は違法」とした一審横浜地裁判決を取り消し、原告の訴えを退けました。原告側は上告する方針です。
横浜市は〇四年四月一日から鶴ケ峰、岸根、柿の木台、丸山台の四園を民営化。同訴訟は、これら四園に通う保護者が起こしたものです。
〇六年の横浜地裁判決は、「特別に民営化を急ぐ理由があったとは認められず、裁量の範囲を乱用したもので違法」とし、一世帯あたり十万円の支払いを命じていました。
今回の判決は、民営化のための条例の制定について、訴訟の対象となる行政処分に該当しないとしました。損害賠償は、民営化への移行期間や保護者の理解は十分ではなかったとしながらも、「転園なども配慮され、保護者の利益は最大限尊重された」と退けました。
判決後、原告団は声明を発表。民営化後に四園でのけがが十倍以上に増えたことを同市の資料で指摘し「保育原理からかけ離れた横浜市の主張を追認しており、どう考えても不当」だと述べています。
傷つく親子 生まないため
判決後、東京都内で開かれた報告会には、支援団体や各地で同様の裁判をたたかっている人たちが駆けつけました。
原告のほとんどが、裁判は初めての経験です。杉山優子さんもその一人。「民営化で傷ついた親子がたくさんいる。二度と同じ思いをする人たちがうまれないことを願います」と語りました。
佐藤正勝さんは「悔しくて、ふざけるなといいたい気持ちです。裁判所に不信感がいっぱい」と怒りをあらわにしました。
山田恵さんは、民営化された際、父母会の役員をしていました。「きのう子どもに裁判の話をしたら、お母さんが頑張っていることは知っているといってくれた。上告後も頑張りたい」と語ると大きな拍手がわきました。
原告団代表の金道敏樹さんは「自分の行動を否定するような気持ちにはならなかった。子どもに接するとき、親が誇りを持ち続けられるようにすることは大事なことだと思う」と話しました。
支援者らは「横浜地裁判決に勇気をもらっていた」「横浜のたたかいから論点が見えた。これからの運動の糧にしたい」などと述べました。
支援団体の「横浜市の保育を充実させ、市立保育園の民営化問題を考える会」の菅野昌子事務局長(横浜市従)は「民営化後、横浜市はやり方を変えた。間違っていたことを認めているということ。それなのに原告の訴えを退けたというのは信じられない判決だ。最後まで支援していきます」と語りました。
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