2009年1月30日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「日米同盟」
従属関係からの脱却が急務
麻生太郎首相は施政方針演説で、「日米同盟を基軸に」「同盟関係を更に強化」すると強調しました。中曽根弘文外相も外交演説で「日米同盟を一層強化する」とのべました。麻生首相はオバマ大統領との電話会談(二十九日)でも、「日米同盟を一層強化する」ことを確認したといいます。
「日米同盟」をこれほどまでに絶対視し、卑屈な従属関係を不動の路線として誇示するのはまったく異常です。これでは世界の変化に対応することも、進歩と平和の国際的事業に貢献することもできません。
平和阻む同盟強化路線
アメリカが国連憲章と国際世論をふみにじって始めたイラク戦争をみても、「日米同盟」が平和の障害物となっているのは明らかです。日本政府がイラク戦争を真っ先に支持し、米軍への軍事支援にふみきったのは「日米同盟のため」でした。派兵した国が相次いで撤退するなかで最後まで自衛隊を撤退させず支えたのも、「日米同盟」を金科玉条にしたからです。
中曽根外相は外交演説で、自衛隊の戦争支援が「高い評価」を受けたとのべましたが、イラク戦争の誤りと失敗そのものを認めないのは、国際社会の常識とも違います。戦争を始めた当のアメリカでさえイラク戦争の失敗を認める動きになっています。オバマ新大統領もイラク戦争を批判し、米軍のイラク撤退を指示しています。
「日米同盟」は、国連憲章がめざす、どんな大国のいいなりにもならず自国の進路は自分で決める自主・自立の原則や、戦争でなく外交で物事を解決しようという「戦争のない世界」の考え方とは両立できない存在です。それを「更に強化する」という麻生内閣の態度は、国連憲章の精神をふみにじり、平和をめざす国際的とりくみを台なしにするものです。とうてい認めることはできません。
見過ごせないのは、中曽根外相がオバマ政権に「率直かつ具体的な提案を行う」とのべていることです。アメリカからいわれる前に、アメリカの対日要求を先取りすることで、歓心を買うのが狙いといわれても仕方がありません。
シーファー駐日米国大使は離任を前に、日本は貢献を求められるまで待つべきではなく、日本からイニシアチブを発揮して国際社会の協調行動に参加する意思を示すことが「強力なメッセージとなり、新政権と関係を始める上でこれ以上よい方法はない」とのべています。日本政府の態度はこうした要求にすすんでこたえようとするものでしかありません。
政府が「海賊対策」を口実にしゃにむにアフリカ・ソマリア沖に自衛隊を派兵する方針を決定し、それに加えて、武力行使に道を開く派兵新法の策定作業をすすめるのも、アメリカの歓心を買う卑屈な態度のあらわれです。
自主・自立の流れが本流
世界はいま、自主・自立の流れが圧倒的な本流になり、軍事同盟ではなく外部に敵を求めない「平和の地域共同体」をめざす流れが大きくなっています。米軍再編や海外派兵路線の強化など「日米軍事同盟」を侵略的に強化することは、世界に通用しません。
日米軍事同盟=日米安保条約を廃棄し、旧来の支配と従属の関係を脱却することがいよいよ急務となっています。
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