2009年1月28日(水)「しんぶん赤旗」
沖縄ヘリパッド建設反対
住民「正当な活動」主張
座り込み排除申し立て審尋 公開を求める
沖縄県東村高江への米軍ヘリ施設建設をめぐって、沖縄防衛局が建設に反対する住民の「通行妨害」排除を求めて申し立てた仮処分申請で、双方から意見を聞く第一回審尋が二十七日、那覇地裁で開かれました。
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審尋は非公開。裁判所には二百人を超える支援者らがつめかけ、待合室や廊下を埋め尽くしました。
申し立ては、日米両政府が東村高江で計画する米軍ヘリコプターの離着陸帯(ヘリパッド)建設に反対して現地に座り込み、監視行動をつづける住民の排除を求めたもので、住民や弁護団は「取り下げたとはいえ八歳の子どもまでも妨害者に仕立て上げる容赦のない、国が司法を悪用した弾圧」と強く反発しています。
国側は申立書で、北部訓練場の一部返還にともなうヘリパッド建設工事を反対派住民が妨害しているとして十四人を妨害行為の「債務者」として提訴、排除とテントなどの撤去を求めています。
住民側は答弁書で国側の申し立てに具体的に反論。高江地区に不在の人物を「債務者」にして、支援団体による同防衛局への申し入れ活動を「妨害行動」とした点について「正当な言論活動であり通行妨害には当たらない」と主張しました。
大野和明裁判長は、国側に対し、何が妨害行為で行為者はだれなのか、監視行動がなぜ妨害行為にあたるのかなどを明らかにするよう求めました。
国側は「調査する」と回答。調査期間として一カ月を要求しました。住民側弁護団は審尋の公開を申し立てました。裁判所は判断を留保しました。
次回は三月二十三日午後三時から。
解説
国側申し立て ずさんさ明らか
審尋は、住民側が答弁書で具体的に反論した内容を、裁判長も認めるなど国側の申し立てのいいかげんさが浮き彫りになりました。
工事にたいする「住民の妨害行為」を理由にした申し立てにたいし、住民側は答弁書で、妨害行動と「債務者」の特定がされず、国側提出の写真に住民の「妨害行動」は写されていないと指摘。逆に工事関係者が「進入路」をふさいでいる状況が分かるなど随所で申し立ての不当性が明らかになりました。
沖縄防衛局は申し立てをめぐって、当初八歳の小学生にまで「妨害者」として「債務者」に指定。しかし県民世論をおそれ、マスコミ報道の翌日には取り下げ、「早期に裁判の判断を求めたいとの観点から」と言い訳しました。しかし今回、裁判長から妨害行為や行為者の特定を迫られると、調査期間に一カ月を要求するなどそのずさんさを見せつけました。
住民側弁護団は審尋の公開(口頭弁論による審理)を申し立てています。国が、国策の一環として新たな米軍施設を建設するために申し立てた仮処分という性格を考えれば、当事者だけでなく広く国民に公開すべきだとの主張は、「国民主権」の立場から当然です。
審尋後の報告集会で、「債務者」の一人、伊佐育子さんの訴えが参加者の胸を打ちました。「国が住民に要求したのは座り込みの中止、テントの撤去だけではない。くらしや子どもを守りたいという願いすらも国のためにならない、というものだ。沖縄の母親は六十数年前に壕(ごう)の中で子どもを守れなかった。いま、国がやろうとしている基地づくりは同じことをくりかえそうとしている。平和はみんなで築くことを実感している」
「沖縄の米軍基地の無条件返還を実現することこそが、日本政府の責務である」(答弁書)との県民の思いを受け止め、国は申し立てを取り下げるべきです。(山本眞直)
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