2009年1月28日(水)「しんぶん赤旗」
主張
不発弾処理
国が全面的に責任を果たせ
沖縄県糸満市の工事現場で十四日発生した不発弾爆発事故は、六十年以上前の戦争によっていまなお県民が安全をおびやかされ、苦しめられている実態をあらためて示しました。
不発弾は、東京など米軍が爆撃したところでしばしば発見され、住民を震撼(しんかん)させています。沖縄は、米軍が空からだけでなく、海からも“鉄の暴風”といわれるほどの艦砲射撃をあびせた結果、不発弾も多いという事情があります。不発弾をかかえた自治体に処理をまかせるやり方を変えない限り、問題は根本的に解決しません。
戦争の“つめあと”残す
糸満市の爆発現場は、老人ホーム裏の歩道でした。戦争中に米軍が落とした爆弾が爆発せずにそのまま地中に埋まっていたものです。爆発で老人ホームの窓ガラスが二百枚以上も割れ、アルミサッシが折れ曲がりました。爆発時はお年寄りたちが全員階下の食堂で食事中だったため被害者がでなかったとはいうものの、一歩間違えば大惨事になるところでした。
沖縄県当局によると、沖縄県が本土復帰した一九七二年いらい、千五十五トンの不発弾が処理されました。日本全体の三千八百トンの約30%ですが、これは県土の狭い沖縄にとっては小さくない数字です。しかも埋まったままの不発弾が推定二千三百トンもあり、これを早く掘り出し処分しなければ、県民は安心して生活できません。
沖縄の不発弾処理が遅れているのは、政府が不発弾処理を県や自治体まかせにしてきたからです。
不発弾を探査し、処理するにはばく大な経費が必要です。最終的には自衛隊が不発弾を爆発・処分するにしても、不発弾を囲う土のうや防護壁づくり、住民避難の広報や避難誘導などがあります。政府は県民の要求に押されて、ようやく来年度予算案に公共事業にかかわるものに限って、土のう・防護壁づくり経費の全額国負担を計上しましたが、それで終わりというわけにはいかない問題です。
民間工事のなかで見つかる不発弾の処理にも、磁気探査を徹底して不発弾を探知するのにも、経費がかかります。一部補助はするが基本は県や自治体まかせという政府の態度では、いつまでも根本的な解決はのぞめません。
そもそも不発弾問題は、戦前の天皇制政府が政府行為としてはじめた戦争の“つめあと”であって、各県当局や自治体、住民が責任を負うべき問題ではありません。
沖縄であれどこであれ、戦争のさなかに米軍が投下、砲撃した爆弾が不発弾として地中に埋まっているのかを探査し、処理する責任が国にあるのはあきらかです。関係自治体に処理を押し付けるのは本末転倒です。政府が全額経費負担し、不発弾処理の先頭にたつことが不可欠です。
政府が先頭にたて
日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は事故直後に、政府に対して不発弾処理対策を申し入れました。
糸満市の上原裕常市長と市議会各会派は政府に、不発弾の除去、処理を国直轄事業で実施することや公共、民間事業を問わず不発弾の安全調査のための経費は国負担とすること、事故の補償などを求めています。当然の要求です。
政府は不発弾処理を戦後処理の問題のなかに位置づけ、積極的な姿勢に転換すべきです。