2009年1月23日(金)「しんぶん赤旗」
自公が海自派兵決定
ソマリア沖 来週にも準備命令へ
自民・公明両党の「海賊対策等に関するプロジェクト・チーム」(PT)は二十二日、現行自衛隊法に基づく「海上警備行動」を発令してアフリカ東部ソマリア沖に海上自衛隊を派兵することを決定しました。違憲の海外派兵を現行法で行おうとする暴挙です。
自公両党は二十七日の与党協議を経て、同日中にも麻生太郎首相に早急な派兵を要請します。首相はすでに、与党案が決まればただちに派兵準備を指示する考えを示しており、浜田靖一防衛相が来週にも準備命令を出す可能性があります。
与党PTが決定した「中間とりまとめ」(4面に要旨)では、政府に対して「海上警備行動の準備に直ちに着手し、速やかに海賊対処に関する具体的な計画を策定し、与党PTに報告する」よう求めています。
「中間とりまとめ」では、警察行動で対応すべき海賊対処の「主体」を「自衛隊」と明記。海上での警察行動を担う海上保安庁については、「自衛艦に同乗」して司法警察業務にあたる補完的な存在と位置づけています。
また、自衛隊と海保は「準備段階を含め緊密に連携し相互に協力する」としています。海賊対策の蓄積がない海自への海保によるノウハウ提供や、海自と海保の共同訓練なども想定されています。
武器使用については「正当防衛・緊急避難」での武器使用を定めた警職法七条で対処するとしていますが、具体的な基準の作成は防衛省に委ねられました。
与党PTは派兵新法「海賊行為対処法案」(仮称)の三月上旬の国会提出を目指すことも決定。来週から論点整理を開始します。
派兵ありき 与党暴走
解説
「準備命令が出たら実行するとしか言えない。しかし何をするか、期間がどれくらいかかるか分からない状況だ。野党共闘でがんばってもらうしか…」。ある防衛省関係者がぼやきます。
自民・公明両党の「海賊対策等に関するプロジェクト・チーム」(PT)によるソマリア沖派兵をめざす性急な動きは、派兵される自衛隊や防衛省にも大きな混乱をもたらしています。
月内にも浜田靖一防衛相が準備を命令し、早ければ三月に海自は現地で活動を始めるといわれています。しかし赤星慶治・海上幕僚長は二十日の記者会見で、海自が発足以来、海賊に対しての議論や教育をしていないと述べ、戸惑いを隠しません。ある防衛省幹部は「海保(海上保安庁)のレクチャーを受けなくてはいけないし、装備の改変もありうる。(準備は)一カ月くらいではすまないと思う」と言います。
重大問題である武器使用基準について与党PTは、防衛省が作成する交戦規則(ROE)で決めると“丸投げ”しました。ROEは非公開とされ、国民の監視が及びません。
この点についても同幹部は「大変なことだ。ROEでも現行法を超えることは決められないし、現場でやってしまったら違法になる」と述べ、「自民、公明の両PT座長は議論の細かなニュアンスを(マスコミに)伝えていない」と苦言を呈しました。
このような経過は、与党PTの動きが、ソマリア沖海賊問題解決の包括的な検討なしに、とにかく自衛隊を海外派兵させたいという思惑を最優先した暴走であることを物語っています。(洞口昇幸)
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