2009年1月22日(木)「しんぶん赤旗」
政界工作 解明急務
「裏金は組織ぐるみ、10億円は氷山の一角」
ゼネコン関係者
西松建設前社長逮捕
準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)の裏金事件は、前社長・国沢幹雄容疑者(70)=二十日付で辞任=の逮捕(外為法違反容疑)で、経営トップもかかわる刑事事件に発展しました。長年にわたって会社ぐるみでねん出した裏金は十億円以上にものぼります。巨額の裏金づくりに社長みずからが手を染めた背景には何があったのか。今後は、裏金の使い道の全容解明が最大の焦点です。(阿曽隆)
国沢容疑者は、同容疑ですでに逮捕されている元海外担当副社長・藤巻恵次容疑者(68)と共謀し、二〇〇六年二月から〇七年八月までの間に、裏金の一部を税関に無申告のまま国内に持ち込んでいた疑いがもたれています。
藤巻容疑者は海外事業の受注工作資金として、部下だった元海外事業部副事業部長・高原和彦容疑者(63)に裏金づくりを指示。タイ・バンコク市発注工事などの受注のために、現地高官に三億円超のわいろをおくったと指摘されています。
海外事業に詳しいゼネコン関係者は、「こういう裏金は組織ぐるみでないとつくれない。十億円は氷山の一角だろう」と話します。
同時に注目されているのが西松建設と政界との接点です。
元同社幹部を代表にした「新政治問題研究会」「未来産業研究会」の二つの政治団体は、自民、民主両党の幹部政治家などに、献金やパーティー券の購入など四億円以上の資金提供を行っていました。
この資金に裏金が含まれていた疑惑もあります。両政治団体の政治資金収支報告書によると、資金の原資とされているのは会費やパーティー収入。しかし、会費はだれが払ったのか、パーティー券をだれが購入したのかまったく不明など、その実態はきわめて不透明です。裏金が政治団体を迂回(うかい)して政界工作に使われた可能性もあります。これらの不明朗な資金の流れも解明が求められます。
一貫して経理畑を歩み、社内で「数字に強い」と評判だった国沢容疑者。トンネル政治団体を使った政治家らへの献金システムの発案者といわれています。
さらに、同社をめぐっては、福島県内の原発関連事業の受注にからみ、地元建設業者にむけ不透明な資金提供がされていた問題も浮上しています。同社は電力業界に影響力があるとされるこの業者に対し、国沢容疑者の指示で二億数千万円を融資。しかし、これまで返済されておらず、融資は同社による利益提供だった疑いがあります。
東京地検特捜部は、この地元業者とともに、電力業界に影響力の強いフィクサーとよばれる人物の関連会社も家宅捜索し、取引の経緯を調べています。
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